*afterschool・1*

□愛を唄う神様*深國明彦
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20時ちょっとを回った

夜道をひとり

スーパーの袋を片手に

私は歩く






週末は彼との大切な時間


何が食べたい?

何でもいいよ


いつものメールのやり取りをして

バスから降りた私は

今日のメニューを電話する

これもいつものやり取り






スクロールする指に

歩幅を合わせて

愛おしいあなたの名前を捜す




当たり前に

あなたと愛し合ってるのに

この瞬間は

いつもなんだか緊張で

あぁ、ホントに

こんなにも

あなたの事が好きなんだなって

毎回ながら思い知らされる








―――――ピッ








『もしもし………うん…もうすぐ着くよ』




『うん……今日のメニューはねー………えっ?』












いつものやり取りを終えて

あなたの待つ家に急ぎたいのに

いつもと違うあなたの言葉に

戸惑う私















『………いいよ、分かった』













でも、今日は特別に

その意見に乗っかりましょう


ちょっと恥ずかしいけど

受けましょう

あなたからの"挑戦状"
























『えー………ん…じゃあ…カラス』




『えっ///……キ、キツツキ!』




『///……ススキ…』




『もぉ…っ………イルカ!』




『うふふ…どっちよ………あ、えーと…イタリア』




『……うん…………え?…あ!ルビー!』




『ん?………んっと…く、草?』




『えっ…な、何?…あ、待って"お"でもいい?………』















頭の中で"お"が

グルグル駆け巡る






『おにぎりっ!』






勝負そっちのけで

楽しんじゃってる私

























「クスクス…どんだけ腹ペコなの〜?」










目の前には大好きな彼


"しりとり"に夢中になった私は

彼の一言で

気付いたら

家の前まで来ていたのを知った












『べっ、別にお腹が空いてるとか…そういうんじゃないもん…』


「つか、だ〜いぶKYなんですけど〜」


『え?どういう意味?』


「ムード台無し〜」


『え?え…?』













そう言うと

スーパーの袋を奪い取り

私を優しく私を抱き寄せた













「"ギュってしたい"」




















ムードが台無しとか

KYとか

今更だけど、ホントそう思う








スキ とか


キス とか


綺麗 とか


かわいい とか


愛してる とか


今すぐ とか


さやかを とかが




最後の"ギュってしたい"まで

繋がってるなんて

今気付いたって言ったら

またKYとか言われちゃう?















「さやか、次は?また"い"だよ〜?」


『い………"いじわる"…』


「る?…う〜ん………パス」


『やった!私の勝ち♪』


「"ちゅうしたい"」


『えー!また"い"………………


「黙って」

















パスしたくせにズルイ


そうやって

唇を優しく塞いで

勝ち逃げみたいで…ズルイ




でも

ホント、私ってば

あなたの事

大好きなんだな…
















「ん?続き、したいの?」











負けた事が

ちょっとシャクな私は

彼の腕の中から

彼を睨み付けた











『のり巻き!』


「また食べ物〜クスクス……さやか?」


『な、何よぅ…』
















あなたからのどの言葉も

私の胸を踊らせては

優しく染み込む




それは昔から知っていた

音色の様に

耳に馴染んで心を溶かす






ほら

今日も優しい声色で

囁いて…?
















「さやか、おかえり」










End.

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