*afterschool・1*

□神様のひとさし指*姫川悠
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『…あ……もしもし………

……姫川だけど…』










あの日決意した俺の言葉は

"もう1回言って"

という

アイツの言葉で

簡単に掻き消された




浮かれて電話した

俺の気持ちはまたしても

空回り






もちろん

同じ事なんか二度と

言えるワケもなく


つか

どこまでもボケてくれてる

アイツがムカついて










『バーカ…』








なんでもねぇよと

はぐらかして電話を切った






それから二週間

アイツとはロクに口も

聞いていない













『はぁぁぁ…』


「………」


『はぁぁぁぁぁ…』


「ちょっとハルカっ!」


『………んだょ…』


「さっきっから…っ!ウルサイっ!」








帰りのHR前

前の席の彩木が

勢いよく振り向いて

そんな事を言ってきた








『何がだよ…』


「もーっ!さっきからため息ばっか!聞いてるボクの幸せが逃げちゃいそうだよっ!」


『幸せ…かぁ……』


「え…?ハルカ??」








彩木のどーでもいい

言葉の中の

小さなフレーズに

耳が傾く




今までは

ピーピーうるせーなと

思ってた

クラスの女子の会話だって


『好き』とか『彼氏が』

とか

『告白した』とか

いちいち反応しちまって


その度に

自分の事じゃないのに

テンションが上がったり

下がったり…


つか、

あん時の俺のテンション

ゴールが

見えねんですけど…?




あれから

一方的に俺がシカトしてる

だけだけど

ちったぁ気にしてくれても

よくね?






彩木の問い掛けにも

ロクに返事もせず

ただ机にうなだれて

ボーっとしてたら

勢いよく扉が開く音がした








「はーい席着いて!HR始めるわよー!」








うっせぇ位元気な声と

ムダに明るい笑顔は

俺が電話しよーが

シカトしよーが

全然なんも変わらなくて


そういう

アイツの余裕みたいのを

見る度

ギュっと胸を捕まれる様な

そんな痛さが俺を襲う










『…………って事で、各自来週までに提出してね!…っと、あと姫川くん』








HRも終わろうとした時

アイツの口から

発せられたのは俺の名前









「放課後研究室にきてね」













………は?






ちょ、ちょっと待て!!


この二週間

俺かーなーりー!!

大人しくしてた

ハズなんですけどっ!!




ない頭をフル回転させても

呼び出さる理由が

思いつかない中

いつのまにか散り散りに

クラスメイトは教室を出て


それすなわち

"放課後"を迎えている合図










「ハルカ、今度は何したの?」


『……っかんねぇ』


「とりあえず、いってらっしゃいっ♪」


『おぅ…行ってくる……』











アイツの

研究室への道のりも

頭ん中では

『?』が

グルグルして


結局

答えが見つからないまま

アッサリと

目的地まで到着した










――――――コン、コン










扉を開ける前

大きく深呼吸をして

気持ちを落ち着かせる




失礼します




ガラにもなく

律儀にそう言って

研究室に足を踏み入れると

こっちを向いて

**が

ちょこんと座っていた










「ごめんね、呼び出しちゃって」


『お、おぅ…で、俺なんかしたのかよ…?』


「うん……」








いつもなら

こっから怒涛のお説教が

始まるってのに…




コイツ

何で俯いてんだ?










『なっ、なんだよっ?』


「姫川くん…ごめんなさいっ!」


『……へ?』









勢いよく頭を下げる

**を見て

見事なまでに

ポカーンとする俺




そんな俺をよそに


私何かしちゃったかな?

ずっと避けられてるよね?

と、

次々と言葉を発する**




その顔は

教壇に立つヨユーある

先生の顔じゃなくて


ヨユーない

クラスの女子と

なんら変わらない

ただの女の顔に見えるのは

俺だけか…?






コイツちったぁ…


いや、かなり

気にしててくれたんだな…













『俺の方こそ…ごめん!』


「えっ…?」


『俺がムキになってただけだからよっ!だから…その…………








次の言葉が

なかなか出てこない

俺を見て

ホッとした様に笑う

コイツの目に

うっすらと光るモノ




それを

なんの躊躇もなく

ひとさし指で拭ったら

みるみる内にコイツの顔が

真っ赤になってったから






俺のひとさし指も

まんざらでも

ないんじゃね…?

って

あん時のテンションが

戻ってきたカンジがした






今度こそ

聞き返されない様に

胸いっぱいに息を吸って…










『俺…オマエの事が好きだっ!』


「え…?」


『だからっ!**が…好きだっての!!』








拭ったばかりの涙が

真っ赤に染まる頬を伝う




俺を捕らえた涙目が

次の瞬間、

フワっと綻んだ








「………うん…私も……」






そう言って笑うコイツは

今日から俺の彼女




俺…グッジョブ!!










End.

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