*afterschool・1〜long*
□恋愛スピリッツ@*深國明彦
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今までひとつでも
失せないものってあったかな
今までひとつでも
手に入れたものってあったかな
どうか
無意味なものにならないでね
今すぐ
意味のあるものになってね
放課後の教室で
ひとり声を殺し涙を流す
彼女のその姿
その涙のワケが
薬指に誓った恋が終りを
迎えたからだと
髪を掻き上げる彼女の
か細い指の
物悲しさで悟った
『さやかちゃん…』
呼びかけに
一瞬身体をビクっとさせ
ゆっくりとこちらを振り向く
涙で崩れた顔
真っ赤に腫らした瞳
「深國くん……」
彼女の癖は
無意識にその薬指の指輪を
触る事
いつそれに気付いたのか
もう思い出せない位
彼女の姿ばかり目で追って
その度に
カラダの奥が疼く感じ
割と嫌いじゃない
この感じ
癖と共に気付いた彼女の
小さな高揚
アイツとすれ違い様
少ない言葉を交わし
お互い何事も無かったかの様に
背を向き合わせ
その場を立ち去る
その時の彼女の顔は
背を向け歩く
指輪の主のアンタは
知る事はないんだろうね
ほのかに頬を染め
教材で
口元を隠す彼女の顔を
らしくないながらに
ずっと見つめていた彼女の姿
今、目の前に
泣き崩れる彼女の姿があって
手を伸ばせば簡単に届く距離
そんな距離にいて
この手を引っ込める
理由などあるのだろうか…
「み、深國く…………」
『いっぱい泣いていいよ?』
「や…離して……?」
『ダメ…離さない……』
俺の腕の中で
いくらでもアイツの姿を
追ってもいいから
アイツを被せないで
アイツを着せないで
アイツを見ないで俺だけを見て
今はそんな事言わないから
だから―…
初めて感じた彼女の温もりは
とても小さく
とても切なかった
and more…
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