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□ハジマリ
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ねえ、君はどうしていつも笑わないの?


そんなにしかめっ面ばかりしてないで、笑ってごらんよ


え?…楽しくも無いのに笑えるかって?


う〜ん、そうだネぇ……


じゃあさ、こうしよう



僕が、君の事笑顔にさせられるように、傍にいてあげる


世界って、辛いこともそりゃ多いけれど、


反面楽しいことやワクワクするようなこともた〜っくさんあるんだヨ


僕と一緒に笑おう?


ね、これからよろしくネ……?












《ハジマリ》















ある昼下がりの午後。
それぞれの時間を過ごしていた二人だったが、ふいにスマイルがユーリの腰掛ける椅子へと近づく。


「ねぇ、ユーリって昔はどんな感じだったの?」

「昔……?」

いつも突拍子も無い質問を繰り広げるスマイルであったが、今回のもまた、真意は掴めないものであった。

「そ。昔!」

「…そもそも、私達はだいぶ幼い頃から既に出会っていたではないか」

そう、ある雨の日。

忘れられないあの、夜の出来事。
透明人間と、吸血鬼は出会ったのだ。

まだあどけなさの残る二人。

当時ユーリは20歳前後、スマイルは10代も半ばくらいであっただろうか。

ほんの小さな頃に、出会って、今日までを共にしてきて。

「ん〜ん、違う違う。僕と出会うよりももっと前の話ってコト」


あぁ、と頷いたユーリは、しばしの間考える素振りを見せる。

そして、

「特には、今と変わらないな」

あっさりとそう告げた。

それはまったくのウソではあったのだが。
何故なら彼は、スマイルに会ったことによって、大きく“変わった”ことがあるのだから…


「ふ〜ん、そっかぁ。でも、ユーリは昔っからそんなに…」

「…?」

少しの間、言葉を区切ったスマイルに目を向ける。


「……やっぱいーや★なんでもな〜い!」

「はぁ?」

どうにも、その時のスマイルは普段の…おしゃべりでひょうきんないつもの彼とは違い、歯切れが悪かったような気がした。

「何か、聞きたかったことがあるのではないのか…?」


ユーリは、突然態度のコロッと変わってしまったスマイルに、いささか戸惑い、尋ね返したが。

「う〜ん、まぁ、大した事じゃないからイイんだけど、ネ〜」


そう、当の本人がそこまで気に留める風でもなかったので、こちらがそんなに突き詰める事も無いだろう、と思い、

「そうか」

と、だけ返す事にした。


少しの疑問はまだユーリの中に残っていたようだが、その話はそれで終了したようだ。


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