【可愛い?格好良い?】
(人識/甘甘)
「人識、こっちおいでー」
名前を呼べば、小走りで来て身体を擦り付けてくる。
「甘えん坊さんだなあっ!」
頭を撫でれば、もっともっと、とせがむように上目遣い。
「〜〜〜可愛過ぎっ!」
「…………おい」
「人識、そろそろご飯食べよっか?」
「おい!」
「なになに?抱っこしてほしいの?」
「おーいー!!」
「うるさーい!!人識がびっくりしちゃうでしょ!!」
「ツッコミどころがあり過ぎるんだけど、俺に一体どうして欲しいんだよ……」
ガクッと首を垂れる人識。
「うーん、これじゃあ分かりづらいね。よし、これから君の事は人識(人間)と呼ぼうではないか」
「普通こっちが人識だろーが!」
人識(人間)はそう叫び、私の腕の中にいる人識───猫を見つめる。
「あのさあ……何で俺の名前な訳?」
「人識(人間)にそっくりだから!」
白く滑らかな毛並みに、赤く光る瞳孔。
川原に捨てられながらも気丈に此方を見つめるその姿が、小さな殺人鬼とそっくりだった。
まあ今はそんな凛々しい感じはちっとも見られないけど(人間・猫共に)。
「そんな理由かよ……タマとかミケとかで良いだろ」
人識(人間)は呆れたように目を細める。
「別にいいでしょ───あ」
人識がお腹を見せながら熟睡している。
これは……気を許しているサイン!
そっと毛並みに沿って撫でると、人識はググーッと身体を伸ばして(人間でいう背伸びだろうか)、気持ち良さそう。
「うああ……!もう、人識ラブリー!大好き!!」
次の瞬間、人識は人識(人間)に首根っこを掴まれ、脇へとどかされた。
代わりに人識(人間)が人識のポジション───つまり私の上にいた。
「……やっぱりそれやめろ」
「え、な、何?ちょ、え、てかそれって?」
「自分の名前だと、嫉妬していいのか喜んでいいのか分からなくなる」
急に近付いた瞳と、ググ、と両手首を押してくる力に少なからずドキドキしてしまっている。
「……それに俺、ネコじゃないし」
「ネ、ネコ?ていうかどいてよ人識っ!」
「かははっ、人識ならそっちにいるぜ?」
「───ムカつく!」
「とにかく、俺が我慢してやってる間にさっさと考えろよ」
我慢って何をだよと思いつつ、猫の名前を考える事にする(いい加減ややこしいし)。
「……あのー」
「あ?」
「落ち着いて考えたいんで、手放して下さい」
「やだ」
「……そーですか」
そんな私達を、猫は全く気にせず日向ぼっこしていた。
(いーちゃんとかどうかな?)
(……あー、襲って欲しくてわざとやってんのか?)
*****END*****
人識(猫)に嫉妬しているのに自分に言われているようで嬉しくもある人識(人間)のお話。
ひとしきかっこにんげんかっことじ
と読みます。長い。
ネコは…そっちの意味で(略
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