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□第二幕
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何かにつけて諸里は幼馴染だ、親友だ、と露乃を巻き込み、時には滑稽な事もあったが、大概は迷惑な事だった。
それでも嫌悪に思わないのは諸里の二言目の幼馴染だ、という台詞にマインドコントロールされたのだろうか。
迷惑だと思うが、今更仕方ないとも思う。
「そうそう、露乃ちゃん」
「何?」
「彼等は聡い、というか鋭い」
「? はぁ」
「だから露乃ちゃんは、僕がバックって言ったら逃げて、ゴーって言ったらこそこそ進んで、シャダンって言ったら伏せて」
「……私達は今から猛獣狩りにでも行くんですか」
「似たようなもんだ」
ことごとく諸里は不安にさせた。
旧校舎は思ったより廃れていなかった。
露乃はシダや雑草のぼうぼうに生えた、見た目小汚い掘っ立て小屋のようなものを予想していたが、実際はそんなに悪くない、ちょっと年季の入った校舎だった。
掃除や点検をしてない、と言っていたから見た目では解らない欠陥があるのだろう。
「…! 露乃ちゃんシャダン!」
「シャダンって…、えと…!」
諸里が小声ながら注意し、露乃を押さえつけ伏せた。
なんなのか、と諸里を見遣ると、双眼鏡を目に当てられた。
微妙に痛い。
「な、何…何見ろって…」
「ほらっ あそこらへんっ なんか居る…!」
「あ、ああ…あの男の人?」
なんか、では失礼ではないだろうか。
しかも双眼鏡を取って肉眼で確認することができる。