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□第二幕
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「…餅は餅屋に、ねぇ…それでもすこしは自分でやろうと思わないの」

「あちらさんも忙しいんだよ」


カメラを弄りながら言う露乃に、双眼鏡を手に持った諸里が言う。

旧校舎に向かって歩いている。

宵越高校校内は県内では大きいほうで、歩きながらも旧校舎までは少し遠い。

一応露乃は報道部の持ち物として思いつく限りの筆記用のメモ帳やペンを持ってきた。

小学校や中学校で何度かB4一枚の新聞を書いたことがあるが、自分の事やスクラップが多かった。

自主的に調べあげるのは新鮮である。

ジャーナリストっぽくメモ帳など持ってきてみた露乃だが、諸里のほうはカメラ(多分、高性能)と双眼鏡、その他にもいろいろと持ってきたようでナップザックを背負っていた。

度肝を抜かれるというか、狐につままれるというか、やるんならとことんやる風体に露乃はやる気が当初より減退していくのを感じていた。

加えて、非合法の『薬』販売現場に向かうともあって、できるならやりたくない。

しかし諸里と一緒に居るならば、なんとかならないところもどうにかなりそうな気がして不思議だった。


「それに、これでスクープがとれるかもしれないし、部のPRには持ってこいのネタじゃないか」

「一発目から校内の危ない連中の危ない『薬』のネタかい」

「ふっふっふー。露乃ちゃんビビリだね」

「貴方が恐いもの知らずなんでしょう」


ビビリは否定出来ず、改めて諸里の危険知らずに脱帽する。


「圭くんが言うにはさ、これでいい具合にいいネタ、要するに確実たる証拠と証言を手に出来れば、How do 部を正式に立ち上げるのを許可してくれるって」

「……約束ってそのことか」

「うん。あの圭くんが本当に守ってくれるかどうかはわかんないけど、とぼけられたって脅す方法は幾らでもあるしね」


愚安亭にピアルームを出る際に言っていたことを思い出す。

成程、ただでは引き受けなかったわけだ。

諸里が楽天的なのか、すみにおけないかわからない。


「だから頑張らないと。ね、露乃ちゃん」

「はいはい。上手くいくといいね。…厄介事にならなければいいね…」

「まーた、後ろ向きにー」


諸里が笑って言う。

露乃はそれを見て、厄介事は諸里と幼馴染となったときから起こっている、と思い直した。





 
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