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□第三幕
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「よし、じゃあ、行こうか露乃ちゃん」
足音を立てない諸里の後について行く。
見失わないように、出来るだけ近くで歩いた。
旧校舎は四階からなっており、露乃と諸里は階段を登っていた。
諸里の予測ではあるが屋上に居るとなると、階段は結構なプレッシャーだった。
一つ登る度に『彼等』に近付く。
大丈夫だ。同じ高校生なんだから。露乃は頼り無い前向きに縋った。
ダークグリーンの階段を昇る。薄ら寒い空気は錯覚なのだろうか。
「…ビビリの上にネガティブなんだね、露乃ちゃん」
「え、う、いや、うん、かもね」
「大丈夫だよ。同じ高校生なんだから。仮にも学校内で粋がった大人見習いに何が出来る?」
少し昔の漫画のように不良蔓延る平成ではないし、キレやすい、とは限らない。
しかし、と渋面を見せる露乃に、諸里は苦笑を漏らす。
「いざとなったら…露乃ちゃんが思うような最悪の場合になったら全力で逃げてね」
「…な、なるの?最悪の場合に」
「ならない。多分」
「…………多分か…」
階段を昇る。振り向くと階段の踊り場に垂直に立つ壁にある窓から、光が差し込んでいる。
埃っぽい校内を照らし、ダークグリーンが白くぼやけて見えた。
「…『薬』、調べる、って言ってたけど、詳しいの?」
「詳しいわけじゃないけど、どうにかなるでしょ」
階段を昇る。直ぐに応えた諸里の顔を後ろから窺う。
「どうにかって?インターネット?本とか?」
「んー…とりあえず、薬品が必要になるね。ていうか、それ専門の調べる機関に依頼するって手もあるけど…あんまりなぁ」
階段を昇る。渋る理由が何となく分かった。
「校長が生徒会に、生徒会が私達に、私達がそれ専門の機関に…なんて依頼しすぎだよねぇ?」
「なんかそういう話があったなー…宮沢賢治の本に」
「あー…カエルのゴムの靴の話?」
「そうそう。でもタイトル思い出せない…あ、いやいやそうじゃなくて」