Main

□第三幕
1ページ/13ページ



「よし、じゃあ、行こうか露乃ちゃん」


足音を立てない諸里の後について行く。

見失わないように、出来るだけ近くで歩いた。

旧校舎は四階からなっており、露乃と諸里は階段を登っていた。

諸里の予測ではあるが屋上に居るとなると、階段は結構なプレッシャーだった。

一つ登る度に『彼等』に近付く。

大丈夫だ。同じ高校生なんだから。露乃は頼り無い前向きに縋った。

ダークグリーンの階段を昇る。薄ら寒い空気は錯覚なのだろうか。


「…ビビリの上にネガティブなんだね、露乃ちゃん」

「え、う、いや、うん、かもね」

「大丈夫だよ。同じ高校生なんだから。仮にも学校内で粋がった大人見習いに何が出来る?」


少し昔の漫画のように不良蔓延る平成ではないし、キレやすい、とは限らない。

しかし、と渋面を見せる露乃に、諸里は苦笑を漏らす。


「いざとなったら…露乃ちゃんが思うような最悪の場合になったら全力で逃げてね」

「…な、なるの?最悪の場合に」

「ならない。多分」

「…………多分か…」


階段を昇る。振り向くと階段の踊り場に垂直に立つ壁にある窓から、光が差し込んでいる。

埃っぽい校内を照らし、ダークグリーンが白くぼやけて見えた。


「…『薬』、調べる、って言ってたけど、詳しいの?」

「詳しいわけじゃないけど、どうにかなるでしょ」


階段を昇る。直ぐに応えた諸里の顔を後ろから窺う。


「どうにかって?インターネット?本とか?」

「んー…とりあえず、薬品が必要になるね。ていうか、それ専門の調べる機関に依頼するって手もあるけど…あんまりなぁ」


階段を昇る。渋る理由が何となく分かった。


「校長が生徒会に、生徒会が私達に、私達がそれ専門の機関に…なんて依頼しすぎだよねぇ?」

「なんかそういう話があったなー…宮沢賢治の本に」

「あー…カエルのゴムの靴の話?」

「そうそう。でもタイトル思い出せない…あ、いやいやそうじゃなくて」





 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ