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□第四幕
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二駅を経て電車を下り、朝焼駅に着く。
ホーム、改札を通り、住宅街を進み、大層なマンションへ入る。
『オーエン・コルファー』マンションは信頼が物を言う賃貸物件で、その一室を借りるには必ずツテが必要とされる。
住居人の紹介は最低限、管理人から紹介された仕事を一環して継続する事だったり、経歴や職歴が重要になったり、評判や人徳が重視される場合もある。
諸里と露乃の場合は幼少時からこのマンションに住んでいる。
親がこのマンションを気に入り借りて、いまの生活を送っていた。
諸里は元からこの『オーエン・コルファー』に三世帯に及び住んでいたようで、後に入ってきた留辺蕊一家と(主に諸里少年と露乃少女の交流により)良い仲になった。
しかし信頼が物を言う賃貸物件ともあり、一度退去してしまうと二度と戻れない。
だが、住人が困難だ、というときはどんなことであれサポートしてくれる他、『オーエン・コルファー』には信頼で動く事柄も多い。
これは人の見方により欠点か美点か変わるだろう。
すくなくとも引越しが趣味な人間にはお勧め出来ないマンションだ。
その一見変わってないようでものすごく風変わりなマンションのエレベーターに、露乃と諸里は乗っていた。
諸里が露乃の自宅の階番号を押し、エレベーターは動き出す。
「考えとかまとめたいんだけど…露乃ちゃんの家でいいよね?」
「うん?いいよ。そのまま来るんでしょう?」
まあね、と答えは分かっていたようで笑みながら言う諸里。
エレベーターを降り、露乃が常備の鍵を使い、留辺蕊家へ入る。