めいん

□染愛
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「ほら、またここも間違えた。いい加減しばいていいか?」
 
「ちょーっ待って待って!どこ?どこが悪いのせんせーっ!」
 
「もう全部だよ。ほんっとお前、俺の科目だけこんな壊滅的って何?ケンカ売ってんのか?」
 
「売ってないから謝るからお願いだから教えてください先生様」
 
「…ったく、しょーがねぇな」
 
めんどくさそうに舌打ちすると、先生は俺のレポート用紙を一枚抜き取って、綺麗な字でさらさらと数式を並べはじめた
 
「…こうなるから、さっきの公式ぶっ込んで計算したらαが2、βが5になんの。理解したよな?」
 
「う…うん、した、たぶん」
 
「んじゃもいっちょこの問題いってみよー」
 
学年で赤点だったのが俺だけだったらしく、こうして放課後に二人っきり、みっちりと授業を受けているのだ
 
別に意図的なものではない
 
ただ、本当に、数学というのは俺に向いてないだけだ
 
黒縁眼鏡の奥から切れ長の瞳が俺のことを見ている
 
少し意識するだけで手が震えてテンパって、また計算をとちる
 
ドSでリアル鬼畜眼鏡で口より先に手が出るようなこの人が、俺の恋人だとか、ちょっと信じらんねぇよなぁ
 
なぁせんせ、好き、すきだよ
 
先生は俺のこと、好き?
 
女々しいから聞かないけどたまに不安にだってなる
 
 
 
 
時間はかかったけど、それでもちゃんと問題は解けた俺に、先生は「ちょっと待っとけ」とだけ言ってどっか行ってしまった
 
あーだめだ、疲れたからかなんか眠くなってき「…おい」「ふわぃい!!」
 
「寝てんじゃねーよ、まだ残ってんのに…ほれ、やるから頑張れ」
 
無造作に差し出されたのは購買のビニール袋
 
中身は…え?コーヒー牛乳?
 
「せんせ、これ…」
 
「お前それ好きなんだろ?しょっちゅう飲んでるし」
 
確かにコーヒー牛乳はいつも飲んでるし俺の好物だ…けど、そんなとこまで俺のこと見てくれてたの?覚えててくれたの?
 
口には出さないけど、先生も俺のこと、好き…なんだ
 
「せんせ…」
 
「ん?」
 
「俺、すっげ嬉しい…先生、好き」
 
「…知ってる」
 
にっと笑った先生の顔がまたかっこよくて、もうどうにかなりそうだった
 
 
 
 
 
 
 
          end.
 

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