めいん

□klutz
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「兄さんなんて、呼べるわけない」
 
俺が吐き出すように呟くと、俺よりかなり小柄で、俺よりいくつか歳上で、先日俺の"兄"になったばかりの男は驚いたように目を見開き、そして哀しそうに辛そうに笑った
 
「兄としてなんて、見たこともない」
 
「別に、兄が欲しかったんじゃない」
 
彼を傷つける言葉がすらすらと唇から出てきて、止まらない
 
彼の心を鋭利なナイフでえぐるたび、どんどん彼が小さくなっていく気がして、たまらなかった
 
抱きしめたい、いっそ一つになるまで
 
でも彼は大人の顔して、傷ついてないふりして、部屋で、独りで、ひそやかに泣くのだろう
 
今だってそうだ
 
途方に暮れたように笑いながらも血が滲むんじゃないかというくらい固く拳を握っている
 
「そ…う、だよな…。普通に考えたらそうだよな。俺、ずっと弟がほしくてさ…お前みたいなかっこいいヤツ弟に持てて、すっげぇ嬉しかったんだ…。でも、俺だけ、だよな、こんな浮かれてんの。…ごめんな、ごめん。嫌われてるなんて…知らなかったんだ…。」
 
そこまで言って耐えきれなくなったのか、俺の部屋から出ていった
 
ずっとやっていたゲームは、次のステージに進めないまま虚しいBGMだけが鳴り響く
 
 
 
ごめん、嫌ってなんか、ないんだ
 
ただどうしようもないくらい好きすぎて、兄なんて呼びたくない
 
兄弟じゃなくて、もっと別のものになりたかった
 
ふるえる肩を、抱きしめたかった
 
 
 
 
 
(お願い弟なんて言わないで。俺はもっとずっとあんたを、)
 
 
          end.
 

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