めいん

□Why!!??
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花柄のワンピース、綺麗に巻いた髪、整えた爪、つやつやの唇、長い睫毛に縁取られたくるくるとよく動く目…
 
どうしたって女にしか見えないこいつには胸にあるはずのもんはないし股間にないはずのもんはある
 
つまり、正真正銘、男
 
名前は史孝なんていかついくせに、大学に入ってから一気にはっちゃけやがった
 
物心ついたときからお隣さんで、お互い一人暮らしになった今でも何でか隣
 
おまけに将来の夢はと聞けば俺のお嫁さんだとかかわいこぶった声で答えられた
 
つまりは俺のことが好きなんだろうか
 
あいにく男に好かれる経験は初めてだからわからん
 
 
 
「竜ちゃんはさぁ、彼女とかまだできないの?」
 
「竜ちゃん言うな。…俺がモテねぇの知ってんだろ」
 
えー、竜平なんだから竜ちゃんでしょー?とかなんとか女みたいに間延びした声で、でも安心したように言う
 
「だよね、竜ちゃんには俺がいるもんねぇ」
 
「…なぁ、史孝」
 
「やーだ、ふみって呼んでよ」
 
「ふ み た か く ん ?…ずっと気になってたんだが、お前…俺のこと、好きなのか?」
 
ちょっときょとんとして、それから史孝は弾かれたように笑いだした
 
「ぷっ…ふはっあっはははっ、はははっ!」
 
「ちょ、どうした?大丈夫か?」
 
「す、すきもなにも…大好きだよ!愛してる!そっかぁ…竜ちゃんやっと気付いたのぉ?小学校のときからずっとずっと好きだもん」
 
「でも…じゃあなんで女装する必要があった?」
 
だっていくら俺が好き好き言っても竜ちゃんやっぱ女の子の方が好きでしょ?なら女の子になる他ないんだよ
 
女の子は良いなぁ、女の子になりたいなぁ…
 
笑っていたはずの史孝はいつの間にか泣きそうに顔を歪めていた
 
その様子を見てうっかり胸キュン(死語)してしまった俺は何だ、いつの間におホモだちになっちまったの?
 
だからか知らんが…気付けば史孝を抱き締めていた
 
「りゅ、竜ちゃ」「何も言うな、俺とてわからん」
 
腕の中の身体がだんだん熱を帯びてきた…と思えば、いつの間にか視界には天井が…え、天井?
 
「もー…あんなぎゅってされたら欲情しちゃうじゃん☆」
 
「いっやいやいやおかしくない?しちゃうじゃん☆じゃなくてさぁ!」
 
どうやら押し倒されてしまったようで、何か知らんが腕が動かない
 
足だって固定されてしまっている
 
どうしてこうなった!
 
「何でって、ようやく俺を見てくれるようになったみたいだから身体に直接気持ちを伝えようと…」
 
「急展開すぎる!ちょっと前のシリアスはいづくんぞ?!」
 
「うん、だから実際いま本気で抵抗されなくてすっげぇ安心?ってか気ぃ抜けたっていうのかな、拒否されなかったことに対して安堵してる」
 
いや抵抗させなかったんだろうがとか
 
全てを受け入れたわけでもないとか
 
言いたいことはいっぱいあるわけだが
 
何よりこの臆病な男が愛しく思えるという現象に正直戸惑っている
 
こいつに愛されることが嬉しいと心が叫んでいる
 
だから、こんな台詞だって出てくるんだろうか
 
「お…お手柔らかに…」
 
「…うん、目一杯、優しくするから」
 
そう言って、手始めに触れるだけのキスを
 
どうしたら良いかもわからないまま、俺の初めての夜は更けていくのだった
 
 
 
 
 
 
          end.
 

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