小説天狼星
□guilty(ギルティ)
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有罪判決。
有罪判決。
僕も君もアナタも彼も。
みんな、みんな、有罪判決(ギルティ)。
彼の前では皆、有罪(ギルティ)。
【guilty】
判例@
眠気が空気に漂う、明け方前のベッドの中で、リーマス・J・ルーピンは、小さく身じろいだ。
(………まだだなぁ………)
当たり前の事だが、朝は、まだまだだった。
深紅の毛布越しに、夜の気配を感じて、リーマスはまた、目を閉じて念じた。
(早く朝になりますように……。早く朝になりますように………)
……それからどの位経ったのだろう。
「…………が寮室の眠り姫にも、困ったものだね」
念じていたら、また、眠ってしまっていたらしい。
重たい頭の隅で、はっきり朝を自覚して、リーマスは緊張した。
さっき聞こえてきた、嫌味な感嘆詞にではない…。
「そう言うなって。――こいつも、疲れてんだよ」
答えと共に響き出した、優しい靴音に、緊張したのだ。
彼の手がカーテンを開けて、自分のベッドの前に立った。
彼は、身を屈めたかもしれない。自分の寝顔を見て、溜め息したかもしれない。
けれどともかく、彼は毛布越しで肩を掴み、耳元で囁いてくれた。
「起きろ。リーマス、朝だぞ。起ーきーろー」
彼の親友の、「よくやる」というジェスチュアーも、全く気にならない。
(僕の朝はこの時の為に。僕の朝はこの為に。)
何度目かの呼び掛けの後、深紅の毛布から顔を出して、リーマスは微笑んだ。
それ以上に華やかな笑顔を浮かべている、友人の、シリウス・ブラックへと―――……。
いつも通りの朝の風景。
いつも小さな罪悪の宿る、普段通りの朝の風景。
判例A
「シーリウスっ!」
軽い、コミック誌でも読むかのような雰囲気で、『サイエンス』最新号のページをめくっていた親友の首筋に、ジェームズ・ポッターは、派手なタックルを決めた。―――が。
「欝陶しぃんだよ!!!!」
それは、首筋に着く前に、彼の大きな手の平によって、遮られてしまった。
リーチの差異という物は、残酷で無常だ。
君のせいで、髪がぐしゃぐしゃになっちゃったよ、とばかりに、わざとらしく黒の癖毛を梳いてみせるが、―――さすがは我等がシリウス・ブラック。
平然と科学誌を眺めながら。
「゙愛しい姫君゙のケツは追っかけなくていいのか?」
と、切り返す辺りに、彼流の皮肉が冴えまくっていた。