小説天狼星
□〜Happy Birthday〜
1ページ/7ページ
――この日は年に一度。
天の川(ヘヴェンリー・リバー)で、牛飼いと機織り娘が、逢引きする日なんだよ?
いつも心にユーモアを忘れない、美貌の名付け親はハリーに言った。
――……今年のプレゼントには、星空を贈るよ。
………君のためだけにね。
………今時、映画の主人公さえ言わない様なセリフが、自然に似合う名付け親―――。
彼の名は、シリウス・ブラックと言った。
〜Happy Birthday〜
その日は、朝から雨が降っていたけれど、ハリーは上機嫌だった。
雨雲の向こう側に太陽が沈んで、暗くなった部屋に明りが灯っても、雨は降り続けていたけれど、別室のリリーに名を呼ばれた瞬間、ハリーは踊った。
「は〜〜〜い、今行きまーす!!」
今日は、ハリーの八回目の誕生日(ポッター家では、0歳から数えて誕生日を祝っている。――ハリー限定)。
ハリーが七歳になる日なのだ。
――先週ギリシアから帰って来たシリウスは、ハリーに約束してくれた。
――……今年のプレゼントには、星空を贈るよ。
………君のためだけにね。
手の甲へのキスは、「二人だけの約束」という合図―――。
ハリーは、シリウスが大好きだった。
長い、腰まで届くセクシーな黒髪に、少年の様な笑顔。
大人の遊びや悪戯を、山ほど知っている雰囲気に、エキゾチックな物腰。
シリウスは、ハリーによく、
――ジェームズは、私より、ずっとずっとすごかったんだよ?
と言うけれど、父親であるジェームズ・ポッターは、空飛ぶハーレーで、マグルの飛行機を追い掛けてくれたりしないし、黒のハーフコートを、ロックスターの様に着こなして、ハリーを、人込みの中で、肩車してくれたりはしない。
……シリウスに言った事はないけど、シリウスに子供が出来たりしたら、その子を呪い殺してしまうと、断言出来る位に好きなのだ。
両親とシリウス。一年毎に祝ってくれるバースディも、シリウスの時の方が楽しみだった。
―――魔法使い仲間でさえ、名前しか知らないブラック家。
広大な敷地と、豪奢な邸宅。そこで、多くの失伝魔法と幻獣たちを従え、君臨している、端麗な顔立ちの兄弟。
彼らは、ハリーの自慢のタネだった。
…………気に食わない事もあるけれど、――――好きだった。
「はい、出来た」
姿見の前で百面相していたハリーは、母親の一言で我に返った。
鏡の中にいる、正装した自分――――。
黒いブレーザーの襟元に、足りない物を見つけた瞬間、リリーが、「じっとしててね」
と囁いてしゃがむと、銀のピンバッヂを付けてくれた。
途端、花のような香りに包まれて、ハリーはドキドキする。
母が、パーティーの為の身仕度を整えている証だった。
小さなピンバッヂは、ポッター家の紋章に、彗星をあしらった物。
父とシリウス、両方からのプレゼントだったが、―――不安になってきた。
「ねぇ母さん。
パーティーに、マルフォイはいたりしないよね?」
.