小説天狼星

□guilty(ギルティ)
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「違う違う、そこはそうじゃなくて―――……」
 正体そのものの様に鼻に付く、わざとらしい猫なで声のリーマス・ルーピン

「君、ピーター!さっきと同じスペルを間違えているよ!!」
 性根が態度にまで表れている。――騒々しいジェームズ・ポッター。
「くくっ、―――…ワームテール……」
 そして、ひとしきり笑った後、参考資料のあるページを開き、「ここまで写せ」とばかりに、差し出してやる、偽善者、シリウス・ブラック。
 …………気付いていないのだろうか。

 始めの言葉に卑屈な笑いを浮かべ、次の指摘に諦めたような表情で応じ、最後の提案を、暗い面持ちで受け入れた、あの者の、卑しい根性に。

(…………………)
 セブルス・スネイプは、読んでいた本から顔を上げて、ふと、思案した。
 広げていたのはフロイトの『夢診断』。
(あのような男の見る夢とは、いかなる物であろうか)
 と―――……。


 裏切る事も罪だけれど、黙っている事もまたしかり。
 ……裏切られた者たちを、完全に無罪だとは言わないけれど―――――。



  判決。


「僕等の血は、呪われている。」


 図書館の別の隅で、友人が、突然走り書きした文字を見て、バーテミウス・クラウチは、笑った。
「君は時々、すごく面白い!」
 小さく囁かれた言葉に、彼は、微笑して言った。

「ありがとう」

 漆黒の真っ直ぐな髪が、首筋で切り揃えられている事を除けば、驚くほどシリウスによく似た、美貌の少年―――。
 レグルス・ブラック。



 判決者が、絶対法であるとも限らない。


 アナタも、僕も、彼等も、誰もかも。


 みんなまとめて有罪者。


 審判者のいないまま。

 有罪(ギルティ)。有罪(ギルティ)。有罪(ギルティ)。有罪(ギルティ)。


 罰は残りの生で受けましょう。


   【guilty】

      2006.07.15.
      文責→うつぎ

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