小説天狼星

□〜Happy Birthday〜
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 マルフォイ。―――ドラコ・マルフォイ――。

 ブラック家の当主弟、レグルスが名付け親を務めた、ハリーの大嫌いな人間の名前だ。

 向こうも自分を嫌っていて、それは素直に有り難いのだが………。

「前みたいに、シリウスの家の玄関を開けた瞬間、レグルスさんとドラコなんかが、キスしてる所とか見ちゃったら、僕、絶対死ぬよ?――誕生日が命日になっちゃうよ!」

 ……レグルスが、ハリーに対するシリウスと同じような感情を、ドラコに対して抱いているのが、一番の厄介事だった。

 しかも、ドラコはレグルスに、家庭教師までしてもらっているのだ。
 ………ダイアゴン横丁のオシャレなカフェで、両親と一緒に、アイスクリームを食べている時だった。

――たまには、こういう事もしなくちゃね。
 耳慣れた、穏やかな声に、
――でも先生。今は、まだ授業の時間です。
 …………ドラコの、殊勝な声が重なった途端、ハリーは絶望した。

 暖炉の中から出てきたレグルスは、もじもじしているドラコを引っ張りだして、服に付いた灰を払ってやっている所だった。(暖炉の近くに、灰を払う所があるのだ)

 シリウスもそうだが、レグルスもブラック家の人間。
 目ざといウェイターが用事を聞き、レグルスが、何とかと答え応じている間、ハリーとドラコは、ただ一点を見つめ続けていた。

 レグルスの握り締めた、ドラコの細い手―――……。

 彼が、おずおず握り返した瞬間、レグルスはドラコを持ち上げた。
――……………先生っ!!!!

 うろたえるドラコを、しっかり両手で抱き留めて、
――ここの階段は急だから、一応ね。
  ………大事な生徒に怪我をさせてしまったら、……ルシウスに何て言われるか………。
  ああ、手助けなんて要りません。ドラコはとっても軽いから………。
  それより、チョコレートケーキには、アイスクリームと生クリームを、たっぷり添えて下さい。
  ………ブランデーはサービスかもしれないけど、好きな子供なんて聞いた事もないし、大人も好きだとは限りませんから。

 それは、以前二階に上がった時、シリウスのしてくれた事と、言ってくれた事だった。

 少しは違ったかもしれないが―――……。

 けれど、とにかく許せないと思った。

 目撃してしまった、ドラコの、恥ずかしそうな頬へのキスも思い出して、ますます嫌な気持ちになる。

「レグルスさんは、良い人過ぎるんだ。
 あんなヤツ、碌でもない人間になるって、分かり切ってるっていうのに!!!!」

 正装したハリーが、手を握り締めて叫んだ時。

「おやおや、ハリー君は、そんな表情で、シリウスに会うのかな?」

 開いたドアから、からかう様な声がした。


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