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□LIBERA ME
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見上げた夜空が普段よりずっと良く見えるのは、しこたま飲んだ酒のせいかもな…。
夜明け前の風は綺麗に澄んで、自分でも解るほど酒臭い俺の肌とシャツの間を擦り抜けていく。
――スゲェ、いい気分…
誰もいない夜明け前、通りの真ん中で、俺はまだ熱っぽい身体を風に晒していた。
――明日は休みだからと調子に乗って、アイツらと相当飲んだ迄は覚えてる。
だが、気付いたら俺一人になってんじゃねえか!店の主人に経過を尋ねると、二人に散々飲まされた俺が寝オチてすぐ、アイツらは嬉しそうに女のコの肩を抱いて出て行った、だと…?
それを聞いた俺はショックで再度寝オチてやろうかとも思ったが、もうイイ時間だ。ここでオチると馴染みの店に悪い気がして、大人しく帰ることにした。
アイツら、明日会ったら絶対何か仕返ししてやんぜ…等と酔っ払いの頭で考えながら、フラフラ歩き出す。
気温は暑くも無く、寒くも無く、くだらねえ悪巧みにニヤケていた俺を少しずつ正気に戻していく。
「――スゲェ、いい気分…。」
普段と同じ筈の星空に、無駄に感動したりして、俺を出し抜いたアイツらへの仕返しなんて、いつの間にかどうでもよくなっちまった。
もう一回、大きく伸びをして、そろそろ宮に帰ろうかと思ったその時、向こうから駆けてくる足音に気が付いた。こんな真夜中に随分と乱雑な靴音が響く。俺は反射的に気配を消し、眼を凝らして、足音の鳴る方に気を張った。
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