SS

□LIBERA ME
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街灯も疎らな闇の中から駆け出してきたのは、長い髪を靡かせた黒衣の女。何かに追われるように何度も後ろを振り返りながら、それでも走るのを止めずこっちに向かってきている。


刹那、女の履いていたヒールが脱げてその細い身体がバランスを失った。咄嗟に、女を支えに飛び出しちまった俺…。


「オイオイ、大丈夫かよあんた…」


今まで俺の気配に全く気付いてなかった女は、どこからか現れて急に自分を抱き留めた男の存在にビックリして眼を見開いている。が、直ぐに我に帰り、俺の腕の中から飛び起きて手にしていた銃をこっちに向けた。


「そりゃ無いぜ……。助けてもらっといて、最初になんか言うことねぇの?」


「…ありがと。ハッ、でも…っ、あなたが…父の部下、じゃないとは、限らない…っ。ハアッ…」


肩で息をしながらその女は、顔にかかる乱れた髪を直そうともせず、野犬みてえな目付きで俺を見据えている。銃を降ろす気はさらさら無さそうだ。


「はあ?何言ってんだ。あんたの親なんて知ったこっちゃないぜ。俺は誰の部下でもねえからな。」


言い終わらないうちに俺は、こちらに向けられていた銃身を片手で掴み、トリガーを握り締めたまま離さない女の腕を逆に捻り上げてやった。


「痛っ…!――やめて、離してっ!!もう行くから、早く離しなさいよ、乱暴な人ね!!」


「……あぁん?どんだけ失礼な女だ。折角、気分良く帰ろうとしてたってのによ…ったく。」


俺は女を捻り上げていた手を解きながら、思わず愚痴の一つも呟いちまった。それを聞いた女は急に力を抜いてうなだれる。……おぉ?ちっとは、素直なトコもあんじゃねーか。


「……ゴメンなさい、気が立っていて、つい失礼を…」


「……あぁ?解りゃいいけど……って、ちょ…っ!オイッ!!」


………………。
…………倒れやがったこの女。素直に謝罪の言葉を吐いたと思ったら、今度は何?イキナリ失神てか??しかも、それって俺のせいかよ…?


俺に吊るし上げられた直後、突然意識を失った女をこのまま野晒しにしておく訳にも行かず、俺は渋々女を抱えて聖域へ戻る羽目になった。







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