短文編
□Io cado
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一目惚れだった。
転校してすぐに虐められていた俺を助けてくれた。
その人は、目立つ様な人じゃなかったけど、俺の目にはとても美しく見えて、とても儚く見えて、触れるだけで穢れてしまいそうなぐらい純粋な人だった。
彼女と話していくうちに、想いははどんどん増した。
でも、はまりすぎるわけにはいかない。
俺はボンゴレに復讐する為にここにいる。
マフィアの俺が彼女の傍にいることは許されない。
「古里くん。」
だからそんなに優しく呼ばないで・・・
「また怪我してる・・・大丈夫?」
優しく触れないで・・・
俺にはやるべきことがあるんだから・・・。
日ごろに増していく想いを止める術を俺は知らない。
いけないと分かっていても、彼女を求めるばかりだった。
「どうして、貴方は俺の傍に来るの?」
いつかこんなことを聞いたことがある。
そうしたら、彼女はまたいつものように笑って
「古里くんが寂しそうだからだよ。」
って言うから、俺はまた彼女を突き放す機会を失うんだ。
暫らく付かず離れずの時を過ごした。
ある日彼女は、恥ずかしそうに俺の前に来た。
「私・・・古里くんのこと好きになっちゃったみたい。」
照れたように言う彼女に胸が締め付けられた。
俺と同じ気持ちを共有していたことが嬉しかった。
同時にこれは、突き放す時だと直感した。
「何言ってるの?俺と付き合えるとでも思ったの?勘違いもいいところだよね。もう・・・話かけてこないで。」
本心じゃないことを言うのがこんなに苦しいとは思わなかった。
「そっか・・・ごめんね。」
彼女は泣きそうになりながらも笑って言うと、俺の元から走り出していった。
これで大丈夫。
彼女は二度と俺に近づかないだろう。
これでいいんだ。
彼女が大切だから、大好きだから、俺なりのやり方で守ろう。
頬につたう暖かいものに気づかないフリをして、俺は彼女の背中を見届けた。
Io cado
(貴方のこと本当に大好きだった・・・)