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□この手をとって
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この手をとって





君は、何故か僕の夢に出てきた。
名前も知らない君は、僕の夢でいつも泣いていた。
どうして泣いているのかを知りたかったけど、夢の中だからか、全く心が読めなかった。
君のことが気になって仕方がなくなった僕は、ラキストに君を探させた。
(僕は面倒だから、オパチョと昼寝をしていたよ。)そして、ついに見つけた。君は、やっぱり泣いてた。普段は、人当たりの良さそうな愛想笑いを浮かべて。(まるで、僕のようだ。)部屋に入ると、膝を抱えて、嗚咽を漏らす。
毎日、毎日、その繰り返しだった。
君の心は、夢の中じゃないのに、読めなかった。
2つだけ、読むことができたのは、『みんな死んじゃえばいい』『死にたいな』だった。
矛盾している、と思いつつ僕はどちらかを叶えてあげようと思った。
君が居なくなると、僕はひどく退屈になってしまうので、君の周りを消すことにした。
君以外を、君の目の前で、焼き尽くした。
人間たちは、自分の醜い願いが叶うと、こんなはずじゃなかったと、悲嘆に暮れる。
でも、君は違った。
君は、凄い、と言って喜び、満足げな顔をして、何も無くなったその場に寝転んだ。
僕が、君のすぐ近くに降り立つと、君は体を起こして、誰?と言った。


「僕はハオ。一緒に来るかい?君の望む世界を作ってあげよう」


そう言って、手を差し出した僕をまじまじと見て、いいよ、と笑った君。
僕の右手にのせられた君の左手は、とても小さく、儚く感じられて、僕は君の手を強く握った。




そうでもしなきゃ、消えてしまう気がした。






END

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