妖怪と共に

□番外編
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「何を笑っているおぬしら!ぼくを離せ!」
「わかった、ここでいいか?」
「うむ」

 ベットの枕近くに下ろし、背伸びをするてるてるぼうず。
 家長さんもほっとした様子でベットに潜り込む。このままじゃ、保健室の先生も呼べに行けないから、熱さまシートを勝手に拝借する。
 あとで言っておけば、どうとにもなる。額に貼ってあげて、椅子に腰掛けた。

「で、君は何者?」
「ぼくは、てるてるぼうずとよく呼ばれておる。人々が天気になれと祈る気持ちからぼくは生まれた」
「そのてるてるぼうずさんが何故自ら人に会いに?」
「簡単なことだ。顔を直してもらいたくてな」

 あぐらを書いて胸を張る彼には悪いがどうしても。

「取り返しがつかない顔で言われてもな〜」

 と、正直に答える。

「わたしも思う。それってマジックのインクが…」
「そ、それ以上言わんでくれ。こうなるとは思ってなかったんだ」
「どういう意味だ?」

 体育座りになって沈んでしまった彼は、話そうか迷っていたが、肩を落とし息を吐いたところで恥ずかしげに語りだした。

「先週の出来事だ」

 記憶を思い出すようにゆっくりと言葉を紡ぐ。

「連日雨続きの中、子供達が晴れることを祈っていたんだ。そんな時に見つかってしまい、顔を落書きされたのだ」
「かわいそうに」
「わかってくださるか!」
「う、うん…」

 どんなに喜んだ声を上げたところで表情が不気味だ。
 家長さんは顔をひきつらせつつも頷く。

「そうだな…いっそのこと汚れた部分を切り取ってフードにしたらどうだ」
「いいね!」
「フードとはなんだ?」
「作ればわかるよ。その布貸してくれるか?」

 保健室にあったハサミを取り出して、渡された布を顔の部分だけ丸く切る。
 彼の顔は、興味津々に布を見つめる。その姿、青い目に小さい子供を思わせる顔をしており、さらさらな黒髪の少年だった。
 簡単に出来上がった布を渡すと満足な笑顔を向け、布を着た。

「これなら落書きされないな!ありがとう!」
「どういたしまして」

 ひらひらと布をなびかせては、視界が広くなったことに驚き辺りをきょろきょろする。
 飛び跳ねれば、とても簡単に宙に飛び立ち振り向く。

「そなた達人間に会えて良かった。皆、顔怖さに泣きわめく者や叫び続ける者ばかりで困り果ててたのだ」
「妖怪にも神様にも馴れてるからね……陰陽師だから」
「陰陽師!ほうそなたが…」

 上から下まで見下ろされ、ひらめいたように顔を上げる。

「何か困ったことがあれば、ぼくの名を呼ぶとよい。今回の礼をしようじゃないか」
「名はてるてるぼうず、のはずないな」
《――名は、晴天》
「!!」

 頭の中に直接流れ込んできた声に言葉がつまる。
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