妖怪と共に

□番外編
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「聞いてくれたまえ諸君!!」

 休み時間に清継が、清十字怪奇探偵団に一人勝手に語り出す。一応は、島が目を輝かせて聞き、鳥居と巻も一緒になって聞く。あとのメンバーは、なんとなく聞いている。
 夕日に染まりつつある窓の外を見ながら、露彦もまた耳を傾けていた。
 清継の情報は、なかなか興味深いものが多い。聞いて損するものではない。
 退屈しのぎに大きな欠伸をしつつ清継が口を開くのを待った。

「保健室には妖怪が出る!なんでも、隠れやすい最適な場所と言う。物に化けている妖怪もいるから、ああいう物が溢れ出ている所は最適なんだ!!怪我した弱い人間を食らう場所にもなるってわけだ」

 自信満々に話す彼は、自分のパソコンにあるデータを見ながら何十分も語り続けた。

「ここ数日の間に近くの学校が襲われている。いいかい!明日の放課後は、保健室に集合だ!」



 教室の黒板に目を向けるが、意識が朦朧として授業どころではない。

「はぁ……」

 何回目だろうか、溜め息をまたついてしまう。
 カナちゃんどうしたんだろう。異変に気づいた露彦は首を傾ける。席は、カナちゃんから斜め左にある為か、ため息をつく仕草がわかりやすかった。
 頬がいつもより赤く染まっているのを露彦は見逃さない。
 ──もしかしたら
 そう頭によぎる推測。授業はあと数秒で鐘が鳴って終わりを告げる時間だった。
 ──3、2、1
 予想通りの鐘が鳴り響き先生が手を止め、学級委員が号令をかける。

「家長さんどうかしたの?調子が悪いとか」
「露彦くん何でもないよ、ほら元気だから」

 あからさまに笑顔を向けるが、その顔をいつもよりも赤い。

「嘘は良くないよ家長さん。授業中ため息ばっかりついてて」
「見られてたんだ…」
「それにいつもよりも顔も赤いし、笑顔に元気がないよ」
「そ、そんなことないよ。心配してくれてありがとう」

 素直に感謝の言葉を述べる家長さんにしょうがなくあることをする。
 そうしないと彼女は、ずっとこの調子で空元気を続けるだろう。

「ちょっと失礼して」
「えっ」

 そっと手を伸ばして額を触るとやはり、熱があるようだ。
 苦笑してゆっくりと手を離す。先程より顔を真っ赤にした家長さんは口ごもってしまった。

「ほらね、熱があるみたいだ。保健室に行った方がいいよ」
「でも…昨日清継君が言ったでしょ。保健室に妖怪がでやすいって…だから怖くなって」

 あの清継のせいで家長さんが熱を我慢してたのか。今度清継に辛口お菓子をあげよう。確か、辛くて食べれないんだよな。
 でも、一般人が妖怪を恐れるのは普通か。

「家長さん行こうか。俺も着いて行くから安心して」
「いいの!?」
「陰陽師は人を妖怪から守ることが仕事だから。あと、家長さん可愛いから妖怪に食べられちゃうかも?」
「え?えぇ!?」

 口をパクパクさせて驚いてしまう。だって露彦君は、笑顔のまま素で言っているから。

「また熱があがったのかな?」

 呟いた露彦は家長さんを誘導して、保健室へ向かうこととなった。
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