妖怪と共に
□番外編
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「ちゃんと帰って来てくださいね!」
「心配性だなぁ雪女は…」
「いいですか約束ですよ。指切拳万、嘘ついたら針千本のーます」
半ば強引的に指切りをさせられて約束を交わさせた。
数分前のことだ。
四国の奴らのような妖怪がいてもおかしくないと警戒心を高めた露彦は、元気になったあとも夜にパトロールを重ねていた。
こっそりと外に出かけてはいたが、ついに雪女に見つかってしまった。
四国の時に何も告げずに居なくなったことに腹を立てていたらしい雪女は、こうやって約束を施したというわけだ。
「これでよし!今度リクオ様を心配させるようなことがあれば…氷漬けですからね!」
「1000本針を飲むのもいやだけど、そっちも遠慮しておく」
「じゃあ守ってください」
「わかった、わかったから。ちゃんと帰って来るから」
あまりにも氷漬けにされそうな迫力に負けた。
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
パトロールに行くのに見送られるというのは、初めてで違和感があった。
アパートに住んで居た当初は兄貴いってらっしゃいと、男臭かった。
妖怪だらけだったからなぁ…
◆
夜も更けて来た。
今日もパトロールは不穏な雲行きで終わった。
「人が襲われているな。そうだろ猫又」
「目を離すと違う奴が動くってこったァなァ」
「人間もニュースが絶えないが、妖怪も同じだな本当に」
ここ最近また違う妖怪が人間を襲っている。
わかっていることは、同じ奴ということ。必ず犯行に使われている物が散らばっているからだ。
とは言っても人間を殺すことはない。怪我する程度だと聞いている。
これが過激かしてはまずいためにパトロールを余計に強化しているのだが、姿はまだ現れない。
「清継にでも聞いてみたほうがいいか…」
情報仕入れていそうだ。
この辺の地域では一番の情報屋じゃないだろうか。
「そいつは人間で妖怪を調べているって奴だったか?」
「そうそう。情報が有力的なのが信用しやすいからね」
「信頼してるってことなのか、おめぇが」
「まぁ、確率的に当たっているからな。それにいい奴なんだ」
ぴょんと肩に飛び乗って来た猫又は目を細めて見てくる。
「良かったな」
「いい友をもったよ」
笑顔を見せる露彦を見て目を閉じる。
本当に笑い出したのはこの頃だ。最初会った時は、笑顔が張り付いているだけだった。
少しずつ、彼が変わりだしている。
本当、感謝しねぇとな。
あいつらによ――
「ただいま雪女ってリクオ…」
「お帰りなさい」
「おかえり露彦くん。ボクも言ってくれたら着いていったのに」
「癖みたいなものだから気にしない気にしない。もう眠いから早く寝よ!」
背中を押して家へと入る。
まさか玄関で待ってあるなんて予想外だ。
ガザ──
小さな音が耳に入る。
後ろを振り向いたが誰もいない。誰かに見られていた。その感覚だけは確かにあった。
「どうしたんです?」
首を傾げた雪女に慌てて言い訳をする。
「なんでもない!早く家に入ろう。明日、起きられなくなっては困る」
肩を縮ませて苦笑した。
「自業自得ですよ」
「それもそうだ」
顔を膨らませて言う雪女に笑った。