妖怪と共に

□第五章
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01:目 覚 め な い 君


リクオ視点

 あの日、四国とボク達の戦いは終わった。傷ついた体は、まともに動こうとすると痛みがひびく。
 じっとしてこのまま家に居ては学校にいけないと思い、なんとか抜け出そうと試みることに。

「リクオ様!どこに行こうとするのです!」

 ひっそりと部屋から顔を出すと目の前につららがいた。

「つらら…もう学校行きたいんだ。昨日休んじゃったからね」

 本当のところは、昨日も学校へ行こうと抜け出そうと何回もしたが、結局いろんな人に止められて行けずじまい。
 今日こそは!と意気込んでいた。

「駄目です。リクオ様は完全に傷も治ってないんです」
「大丈夫だよ、動けるようにはなってるよ…」
「傷が完全塞がってません!それに鴆様も安静にするようにとおっしゃってましたでしょう」
「うーん…そうだけど…」
「ですから、おとなしく寝ていてください」

 つららに押し戻されて布団に潜りこむ。
(一日中寝ているのは、落ち着かないんだよなー…)
 ちらりと隣を見れば、牛頭丸がすやすやと静かに寝ている。
 怪我をおっているのは牛頭丸で馬頭丸は無傷と聞いた。話によれば露彦くんが玉章から護ってくれたらしい。
 重傷でないのは、露彦くんが庇ったのだと牛頭丸が悔しそうに言っていた。
 その露彦くんはこの部屋にはいない。

「つらら、露彦くんはどうしてる」
「……まだ眠っています」
「そっか…まだ目覚めないんだね」

 ボクが意識を失っている時に露彦くんも意識を失って倒れた。その後一度として目覚めていない。
 露彦くんの意識がない今は、露彦くんの式神が部屋を用意してほしいと申し出て、別の部屋にいる。
 本当は、少しでも様子を見に行きたい。ボクが巻き込んでしまったようなものだから。誤りたい気持ちもあって……心配なんだ。

「露彦くんいつ起きるかな」
「鴆様が怪我の治りが早いと言っていましたし、きっともうすぐですよ」
「そうだよね、あんなに元気だった露彦くんだから、きっと早いよね」
「はい」

 つららはリクオがうずくまるように潜り込むのを見て、部屋から出て行く。
 リクオ様は一人になりたいのですよね。
 寂しく笑みを浮かべて戸を閉めた。数秒後、全てを聞いていた牛頭丸は、狸寝入りを止めリクオに話かける。

「心配しすぎなんだよ」
「えっ起きてたの」
「いいだろ別に」

リクオに背を向けたまま牛頭丸は、話す。

「あいつには目覚めもらわなきゃ困るんだよ」
「牛頭丸…」
「俺達を庇ったぐらいの礼はするつもりだからな。そんだけだ!じゃあな、俺は疲れてんだ寝る」

 布団を頭ままで被り見えなくなってしまう。
 リクオにはその変化に少し嬉しくなった。
(あんなに敵視していたのに心配するなんて…)
 布団に入っていると、だんだんと心地よくなってきて瞼を閉じる。

 ──露彦くんが早く目覚めますように。

 願いながら、意識はふと途切れた。
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