妖怪と共に
□番外編
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※これは羽衣狐へ対決に行く前の話の企画物。
※もしも、羽衣狐様に露彦がのっとられて自分で何も出来なくなってしまったら、他の皆の反応。かなり嫉妬深くなっております。ゆえに、ややBL風味。ご注意ください。
【ALL/嫉妬/首無/リクオ】
◆
近頃、頭の中で響く声がある。
あいつは欲があって困る。それに京に早く来いと申すのだ。
力を抑えてはいるが、どうしてかたまに響く。
だんだんと疲れてきてしまった俺は、しばらく行ってなかった化猫屋へと行くのだった。
「猫又ー!酒だ酒!今日は飲む!」
「おめぇさんやけに元気だな」
「一つ目の奴め…俺に書類を押しつけやがって…」
「それは気の毒にな〜っぱーうめぇ酒だ」
飲み続ける猫又にならって俺も飲み干す。
しばらく、ずっと飲み続け、二人は酔い潰れるまで飲み合っていたのである。
見計らってやって来た良太猫が見たものは、潰れて寝ている馬鹿二人だった。
「またお二人は…」
そう言っては笑うのだ。
まだ、そう歳でもないのに生き生きとすることが露彦にはない。表では学校は楽しいが、妖怪はめんどくさいとよく言う。
肩をゆすって起こそうとためすが、まず起きないのが露彦の方だ。
一端寝ると安堵してしまったのか朝まで起きない。
「おい、猫又の弟!起きろ!」
頭を叩かれて起こされるのが猫又である。
「いってぇ…おめぇはなんでいっつも頭を叩くんでぃ」
ふてくされた赤い顔で睨む。
「いいか、露彦をしっかり連れて帰るんだぞ」
「あいあい〜わかってますって〜」
この男は酔っ払いながらも返事をする。
と、その時露彦がゆるりと起き上った。
目が据わったままの彼は持っていた盃に酒を注ごうとしていた。
「これ以上は飲まない方が!」
「よい、こやつは寝ておる」
「酔っていかれちまったか?おめぇ起きてるだろ」
頭を押さえながらも猫又は隣に座っている露彦を見た。
喉に何かを詰まらせたように猫又は咳をした。
「おめぇ…露彦じゃっ」
口元を扇で押さえつけられ話せなくなった猫又に露彦?はにこやかに笑う。
そうしてから熱いと申して扇を開き仰ぐ。
何やら冷や汗をかきだした猫又はすっかり酔いを覚めて良太猫を掴む。耳元でひっそりと教える。
「おい、あいつは露彦じゃなくてだな…羽衣狐だったりする」
「はぁあああ!?」
「大声出すなって!」
「ふふ、聞えておるぞ」
飲む勢いは止まらず、ほろ酔いぐあいで飲む露彦はこちらを見ている。
「帰るぞ、こんなところで何かあったら困る!!てーのは、建前だ。空狐にこっちが怒られるだろ!」
腕を掴んで露彦を引っ張り上げる。
不機嫌そうに睨みつけられるが、なんとか引っ張って外へ出そうとする。
こいつの睨みは末恐ろしい。しかも、目が座っている。良太猫は唖然として見送りかけた。
「お、お勘定…を…」
この場で言うのもなんと言えないが、しっかりとそこだけは守るのであった。
「そうであったな…ふむ、確か露彦はこっちに…」
体のあちこちを探し出そうとする姿に着物が崩れそうになったのを慌てて猫又は止めた。
周りの皆がこっちを見ては、女は悲鳴を上げる。
猫又は固まって動きやしない。
「今回は、俺が出す。それでいいだろう良太猫」
「へ、へい…」
「ではつけておけよ!じゃあな」
引きずって露彦を運ぶのだった。
羽衣狐の心境としては、
──このような輩がよく露彦にいる。全く、まだ酔ってはおらぬというのにのぅ。