妖怪と共に
□第八章
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01:開 か れ た 総 会
廊下に響く足音がやけに重たい。これから起きる事を思うと、また重い。うまくいくとは思うが。
妖怪達は露彦が来ると慌てて道をあける。
普段の露彦ならば、よそよそしいことはしない。しかし、彼が一変しているとそうもなる。
人間ではない妖怪の姿。着慣れた服ではなく、しっかりとした服装。内は深緑の着物に羽織りは、紅葉を散りばめた紅赤。鮮やかさがある一方で表情は堅い。
背後に付き添う空狐は、露彦が緊張していることがわかった。
ざわめいていた総会が行われる場に踏み入る。物言いたげな視線を受けるが、気にしないことにする。
総大将が腰を座らせると静まり返り、リクオも総大将の隣に座る。露彦は手前に座ることとなる。
「今日、急に皆を呼んだのは、聞いてはおるだろう。露彦から説明せよ」
「はい」
向けられる視線全てが集まる。
──このような、不信感を抱かれる場は久しぶりだ。
しっかりと左手で扇を握りしめて立ち上がる。
「まず始めに、私のためにこの場を用意していただきありがとうございます」
深く頭を下げる。
「もう京の話を聞いている方がいらっしゃるかもしれません。羽衣狐が復活したと、ご存知でしょうか」
静まり返っていた空気は、瞬時にざわめきに変わる。やはり羽衣狐はそれ程、脅威となっているのか。
「ですが、ご安心ください。被害を最小限にしようと京でも動いています」
「どうしてそんなことがわかるのか、お聞きしたい」
木魚達磨がこちらを向く。その問いに露彦の口元が上がる。
「私は京妖怪です」
「それだけか」
怪しむ木魚達磨に笑顔で話す。
「いえ、二大勢力の天狐を母に持ち、陰陽師安倍家直径の父を持ち生まれたため、情報は式神と妖怪が集めてくれました」
「天狐…あの天狐族の息子だというのか!?」
「はい。その通りです」
満足な笑みを浮かべ露彦は一層笑う。
古い幹部達はわかっているようで、口々に慌てだす。
何をしにここへ来た。補佐役になって何をするつもりか。奴良組に害をなそうとしているのか、といろいろ。
「天狐族だと?一体何の用でここに来たんだ!」
声を荒げる一ツ目入道にさらりと返す。
「同盟がしたいなと」
「何を考えている、露彦」
冷たく言い放つ牛鬼。まさか、牛鬼にまで言われるとは、信用ないのか俺。
一呼吸置いて、冷静さを取り戻した露彦は語り出す。
「私は、二代目大将として手を組みたいと思っています。リクオの未来を考えている部分では、同じ意見を持っているから賛同したいのです」
「ボクも露彦くんの理想に一致したよ。だから、同盟はしたいと思う」
それはずっと前のことのように思い出される約束。
“人間と妖怪が共に過ごせる日が来たら、と俺は想っている”
天狐族についてリクオと話した夜に交わした約束だ。
あれは仮なもので、正式なものではない。本当は同盟を結びたかったのだ。