妖怪と共に
□第四章
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02:夢 に 響 く 声 と
キーンコーンカーンコーン
「今日は何の会議ですか?」
「さぁ?」
「何だろうね…」
及川さん、リクオ、露彦の順に口を開く。
いつも通り清十字探偵団は、とある場所に集まり会議を始める。
とは言ったもののほんどが、清継が考えた話しを聞くだけ。適当にみんな好き勝手に過ごしている。
露彦もその一人だ。清継の話は、嘘のものもある為に微妙に聞いてる。
「リクオ…俺、寝てるから、帰るときに起こしてくれないか?」
「いいよ」
「よろしく」
側にあった椅子に座り机に倒れ込む。何故か、妙に体の血が騒いでいる。
最近何回も妖怪の姿になったせいか、封印が緩んで来ているようだ。
早めに封印を直しておかなければ、厄介なことになる。
──まだ、リクオには話せない封印された血のことを。
腕輪は、天狐の血を封印するもので、もう一つ、体自体に目に見えない封印を安倍家によってほどこされている。
──この血がばれたら嫌われるかもしれない。
今の露彦には、怖かった。
避けられることが唯一。
深く眠りについた頃、ある夢を見た。正確には、真っ暗な暗闇に取り残された夢。
そこまでどうやって来たかもわからない。意識がはっきりしないからだ。これは夢。
──妾の声が聞こえるか。
聞こえたくもない奴の声。
封印の儀式の時に聞いたあの声と同じ。
──どうやら聞こえているようじゃのぅ。
笑いを含んだ声に眉を歪ませる。
──そう怒るでない。
嫌に決まっている。
この声が聴こえた時の露彦は、封印が緩んでいることになるのだから。
──妾のと共に手を組む気はないか、天狐の息子よ。
「はっ、笑わせるな。敵同士のお前と組むわけがない。気が狂ったか」
嘲笑い夢の中の露彦は目を閉じる。
──妾は正気じゃ
「ほぅ…」
──憎き天狐を忘れるはずなかろう。それでも、お前はいい駒として使える。
「…………」
──妾の血がある限りは。
この呪縛から解き放される日があるのならば、死んだ時だ。露彦が死ねば、この血も起動しなくなる。
──抑えることが精一杯のお前が勝てはしない。
「絶対に勝ってやるから安心して死ね」
──そんな口が言えるのも今の内じゃ。妾血がお前を従わせようと体の中で争う。
事実のような話をする奴に鼻で笑う。
──それに、
一度言葉をきって喉の奥で笑っているのが聴こえた。
──人間としてお前が生きれるはずがないのにのぅ。
「黙れっっ!!」
怒りに任せて声を荒げる。拳を握りしめ、怒りを抑えようとする。
「お前に言われたくもない!消え失せろ!!」
力強く叫ぶと急速に空間が歪み始める。
力によって封印をもう一度直し始める瞬間だった。一時しのぎではあるが効果はある。
──よかろう。今はまだ…な。いずれ……は……従う……
声が空間が消えると夢から頭が覚める。もやもやとした頭がはっきりと戻ってきた。
「ふー…」
少し額に汗がかいていたらしく、汗を袖で拭く。
──全く、嫌な夢を見た。
夢の感覚なのに夢に思えないこの感覚に鳥肌がたった。
「露彦くんどうしたの?」
覗きこんできた家長さんは、心配そうな顔をする。
無理やり気持ちを押し殺して、笑顔に戻る。
「変な夢を見たんだ」
「変な夢?」
「うん、なんでもないから安心して」
「露彦くん起きたんだ。良かった、そろそろ帰ろうかと思って」
「おう!帰ろうぜ」
この平穏があること事態、露彦には奇跡だと感じていた。だからこそ妖怪であることも隠していた方が嫌われないですむと。
京にいた時に感じた、周りからの違和感ある視線がないことに安堵する俺がいた。
夢を見たからかもしれない。