お題。
□君の涙声を聞いてしまったから
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時刻は夜中だった。
ミッション終了明けで疲れているはずなのに、なかなか寝付けず俺は何度もベッドで寝返りを打ちながら、深くため息をついた。
戦いの後はいつもこうだ。興奮がいつまでたっても収まらない。
まだ起きるには早過ぎる時間帯だったが、もういっそ起きてしまおうかと思っていた時だった。
ふと枕元にあった携帯端末が暗闇の中で光りだす。こんな夜中に、と思いながらディスプレイを見るとvoiceonlyの文字が見えた。
そしてその文字の下を見ると、こんな夜中にかかってくるはずがない愛しい名前が刻まれていたのだ。
「ティエリア!」
慌てて通話のボタンを押す。こんな時間にいつもはかけてこない彼だから、何かあったのではと不安が心を駆り立てる。
『ロックオン、…』
「どうしたんだ!?何かあったか??」
『…、ロックオンが、…僕を、っ…、』
不安げな声色が暗闇で響く。
それはもう泣く寸前のようで、声を詰まらせながら、ティエリアは言葉を紡いでゆく。
「俺が、どうした??悪い夢でも見たのか??」
『…、はい。…僕を突き放して、…っ、ひっく…、あなたが、…居なくなった、…。』
その途端にティエリアが嗚咽をあげながら泣き出した。
「ティエリア…泣くな。」
『…ひっく、…分かってますよ、…っ、でも、』
こんなときまで意地を張る君がそれでも可愛くて愛おしい。
自分のために泣いてくれる俺の可愛い可愛いお姫様。
1人泣く涙姿を強く抱き締めて、たくさんキスして、慰めてあげたい。
『……早く来てください、…ロックオン、』
「分かってるよ、そのつもり。」
退屈だった時間までもが一瞬にして愛しくなる。
勢いよくベッドから起き上がり、乱れた髪をかきあげながら整える。
「待ってろ、今行くから。」
君の涙声を聞いてしまったから、俺は君の元へと向かう。
(今すぐ、今すぐにその涙を拭ってあげたいんだ。)