書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch
□三話『焦燥』
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BGM ラクトガール〜少女密室 (萃夢想)
「なるほど、そちらの状況はだいたい理解しました」
家に招いた菫子に現在解る範囲で昨夜から今朝の出来事を伝える。
すると、険しかった表情が少し和らぎ安心した様子で話し始めた。
「そうなると……パッチェさんが急に掌を返したって訳じゃないんですね」
「そんなことをしてもなんの得にもならないじゃないの。戻りたいっていうのは本心なんだから、それをわざわざ邪魔するわけないでしょ……ってなんなの?その呼び方」
「言われてみれば……それもそうですね。あっ、いや、これは私なりに親しみを込めたといいますか……。駄目でした?」
「何も駄目とは言ってないでしょ。それでいいわ」
「よかった、それじゃ以後よろしくですパッチェさん」
「あと、そう呼ぶなら敬語も止めてくれると嬉しかったりするのだけど……」
「それはその……ぜ、善処します」
「焦らなくていいわ。もしも彼がいるせいで喋り方を使い分ける事が煩わしいっていうなら、いっそのことあっちも同じように呼んじゃっていいから」
「いやいや、勝手に決めないの。それで、菫子の方はなにか分かったのか?」
「いや、私も紅魔館の前までいったら門番さんに追い返されただけなんですよ。
何か起きているとしても、あれより先に進めない限り何もわからないですね」
「私、メイド妖精達だけじゃなくて咲夜や美鈴にも伝えてあるのよ?宇佐見菫子はしばらく私の客人だから訪れたら部屋まで通すように、って……」
それを聞くと菫子は小さく、まさかと呟いて話題を変えるかのように提案をしてきた。
「そうなると、少し時間はかかるかも知れませんがマリサっちかレイムっちに頼んで一緒に紅魔館に行くのが得策ですかね?」
「むぅ……できれば魔理沙には来て欲しくないけど、背に腹はかえられないものね。貴女には無理をお願いしちゃうけど頼めるかしら?」
「任せてください!あ、他には何か調べておくべき事ってありますか?」
急に目を輝かせ、パチュリーに詰め寄る菫子。それにたじろぎつつもパチュリーは答えていた
「そうね……それとなく異変が起きていないかを聞くことってできるかしら?」
「難しそうだけど……やってみます!」
「じゃあ、お願い。その時はくれぐれも私が外の世界に居るってことは気づかれないようにしてね」
「うぐっ……いっ、一気にハードル上げてきたわね……」
「別に異変かどうかは無理に調べなくてもいいのよ?それっぽい臭いを嗅ぎ付ければあの巫女辺りが勝手に気がついて解決するだろうし」
「出来る限りの事はやって見せますよ。そうでないと秘封倶楽部の名が廃りますから」
「ひふう……?なにそれ」
「同好会ってわかるか?」
「馬鹿にしないでくれる?流石にそれくらいはわかるわよ」
「そっか。まあ、ざっくり言えばその同好会なんだ。会員は菫子一人だけど」
「……それ同好会っていうの?」
「秘封倶楽部は私の居場所なの、人数は関係ないわ。それに学校でもちゃんと認められてますー。そうですよね、先輩?」
「暫定的にな。変なこと起こさなきゃしばらくは大丈夫だと思うぞ」
「そうですか。……さて、情報の共有も済みましたし、私はこれで」
「朝早くから呼んだお詫びとしてこれから菫子の分も朝飯作ろうと思ってたんだけど、食べていかないか?」
用は済ませたと言わんばかりにここを後にしようとする菫子。
先程の溢した呟きが耳に残っていたのもあったから、彼女を引き止めていた。
「みっ…魅力的な提案ですが、私はーー」
「いいじゃない、食べていきなさいよ。家主がそう言ってるんだから。私としてもたまには別の人と食卓を囲みたいわ」
「うう……、パッチェさんの頼みでもこれは譲れなーー」
くうぅぅぅ、と断り続ける菫子から可愛らしい音が聞こえてきた。
「……」
「……」
「……」
「……なんか簡単なもの作るからゆっくりしていきなよ」
音の主を見やると耳まで真っ赤にして俯いていたので、背を向けながらそう告げた。
すると「……はい」と覇気のない声が帰ってきたから、恐らくはこのまま食べていくのだろう。
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