私と不思議な同級生(仮題)

□四月の話
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 喉元過ぎればなんとやら、あれ以来何も起きずいたって平凡な高校生活を謳歌していた。
 白昼夢でなく、実際に起きていたというのが非常に度し難い事なのだが……。
 GWも間近に迫り、なんだか周りがソワソワしだしてきた今日この頃。春の陽気に負けないように今日も今日とて通学電車に揺られながら学校へ。道中の学友はいつもより覇気があるように感じる。理由は多分……。

「まさか、この連休前に一年全体で親睦会とはねぇ……」
「いいじゃん。あんまり他のクラスの子と交流なかったし、これを機に友達作れば」
「そうなんだけどさぁ……」
「なんか不安なの?」
「自分のクラスであんなこと起きたせいか、もしかしたら他のクラスも同じこと起きてるんじゃないかとか思っちゃってね……」
「考えすぎだよ、瑠奈は。あれから不思議現象起きてないんだし、そうそう起きないって」
「……だよね。うん、そうだね。ありがと、鳴無さん」
「どいたしまして。ってそのさん付けむず痒いなー。呼び捨てで、聖でいいよ」
「了解、聖。それじゃ、頑張りますか」

 三限四限を使った学年の親睦会。わかりやすくクラス全体で交流を持てる球技大会に近いものとなっていた。
 どのクラスも全力で、The青春って感じのするイベントになりつつある。
 そんな楽しいイベントだったが、小休憩で水分補給を終えて校庭に戻り感じたのは違和感だった。
 他のクラスの子もいる、コートの中ではさっきみたいに別のクラス同士で男子はバスケ、女子はバレーをしている。あのシュートはぎりぎり入らなくて、あっちのスパイクは綺麗に決まって……なにも変わらないはずなのに、それがおかしいというか……。
 ぼんやりした意識の中で、そういえば休憩前もこの光景を見ていたような……とさっきまでの事を思い出そうとすると靄がかかったようによくわからなくなる。そもそもなんで私は校庭に来たのだろうか?
 だって私がさっきまでいたのは……。
「瑠奈!起きて!起きなさいよ!」
「ひじ……り?あれ、私何して」
「よかった!大丈夫?痛いところとかない?」
「だいじょぶ……なにがあったの?」
 眩む頭を押さえながら安堵した表情の聖に問いかける。
「この前言った……その、怪人というか怪物が仕返ししに来たっていうのかな?被害にあった子はほんの少しだけどね。今ウチのクラスの腕自慢と怪現象への耐性があるメンバーで対処してるみたい」
「……ナルホドネー」
 全然なるほどではない。多分この前の一件がなかったら私もそこにいる他のクラスの子みたいに唖然としてこの光景を眺めていただろう。
 というよりも、なんでうちのクラスはこういう事に対処できるのか……。
 呆れ半分驚き半分といった状態で話を聞いていると、遠くの方でナニカの雄叫びが聞こえてきた。……断末魔だろうか?
 少しして、その怪物を追いかけていたであろうクラスメイトが戻ってきた。
 その中でも帯刀さんと、卯華守くんは体操服が赤く染まっている。
 その姿を見て怯える様子の同級生に彼は大声で、
「転んだ!ってわけで保健室いってくるわ!」
 とだけ残し、帯刀さんの手を引いてその場を後にした。
 後から聞いた話だが、幾人かの生徒は怪物の姿を見たり、遠巻きに奮戦する彼らの姿を見ていたようで……翌日からは一年三組を敵に回すなという触れ込みが学年中に広まっていったとか。
 私は所謂幻覚を見せられていたとかで、あのままだったら命を落としていたらしい……というのはこういったことに精通している卯華守君から聞いた話だ。

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 そんなわけでGWを前にして、うちのクラス、一年三組は怪物と渡り合う危険なクラスと広まり、誤解を解く……も何も実際に渡り合う所を見ているので、何の反論もなくその噂は事実として私たちの学年に広まっている。
 そんな中、私についた渾名というものは『普通』。あのクラスでの唯一の一般人。そんなことで嬉しいわけでもなく、むしろクラスの皆との間に埋まらない溝ができたように感じてしまった。
 今回の一件で仲良くなった聖はというと、その後にクラス委員となり、トラブルが起こったらいの一番に駆り出されるようになってしまった。一つだけ同じ趣味があっただけに一緒にいられる時間が減ってしまったのは物悲しい。
 そんなこんなでGW前日にも誰かがトラブルを起こし、空き教室で遊んでいた私たちはそこで解散。どこか寂しい気持ちのまま平穏な連休を過ごし……
「るなっちー、何してんの?トランプ?」
 新しい騒動が起きることを、この時の私はまだ知らなかった。

 to be continued...
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