記念・特別編
□夏特別企画 リレー小説
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流石にこの夏の炎天下の中を休みつつとは言えペットボトル半分の水で彷徨くもんじゃないな。
「ようやっとついた……」
さらに制服な訳で、通気性はそこまで良くない。
息絶え絶えな状態でラスタの扉を開ける。
中には一番に逃げ出した悠と澪さん、しんごがいた。
「やっぱり、一番遅かったか……」
「優希ちんお疲れー。これで後は零夜だけか」
とりあえずカウンターの椅子に座り、悠の言葉に少し反応し手を挙げて返事をする。
「なんか飲むか?」
「水を……一杯お願いします」
出された水で渇き切った喉を潤し終えるのと同時にラスタの扉が空き、零夜が入ってきた。
「おいおいおいおいおいおい!なんで皆してさっさと逃げるんだよ!?あれか?俺は囮とでも言うつもりか!?えぇ!!」
「タコにも……いやイカにも」
「よーし、一発殴らせてもらおうか?」
「おーけーおーけー、その前に、さっきの続きをはなそうじゃないか」
「冒険、だっけ?いきなりすぎないか?」
「仕方ないだろ。しんごもこう、急に冒険したいとか思わないか?」
「急にはないな。するなら予定立てないと」
しんごの言うこともごもっともだ。
「それに、誘ってくれたのは嬉しいけどさ、今年はちょっと、予定があっていけないんだよ」
「俺もちょっとした野暮用があるから行けねーな」
「ふーん?その野暮用って?」
「そりゃなんつったって夏休みだぜ!?このアバンチュールには海まで出向いてナンパでも……」
「なるほどねぇ。すでに彼女がいながらナンパですか?」
「彩音……お前いつから──ちょちょちょっ!?ギブ!ギブ!いきなりアイアンクローはやぎゃぁぁぁっ!?」
いつのまに彩音さんはここに来たんだ?
「悪いけど、このままこの馬鹿持って帰るわ。灸を据えないとまたおかしな事言い出すから」
それだけいうと零夜を引きずり、彩音さんはラスタから出て行った。
「じゃあ、零夜は不参加と。しんごも無理そうなんだよな?」
「そうだな。練習とかしないとだし。俺もここらでお暇するよ」
零夜に続き……ではないけど、しんごは少し急ぎ足で、ラスタを後にする。
「澪と優希ちんはどうよ?」
「俺は大丈夫かな。オーナーに休みも貰ってるしその間なら」
「俺も大丈夫。大して用事あるわけでもないし」
まぁ正直なところ、悠といれば良くも悪くも面白いことに出会えるし、楽しいからな。
でも、口にはしない。からかわれるのが目に見えてるから。
「それで、冒険たって、どこを冒険するとか決めてるのか?」
「場所は決めてないんだけど、とりあえず納涼しつつ冒険とかかねぇ」
澪さんの質問に悠は宙ぶらりんな答えを出す。
すると、どこからともなく声が聞こえた。
『ならば妾が面白い場所へ連れてってやろうか?』
人に見える彼女は白面金毛九尾の揺光さん。
白面金毛九尾というのは、稲葉さんに聞いただけだからまるでなんなのか覚えはないけど、大妖怪というのは覚えている。
「止めろ、お前が絡むと納涼どころか恐怖体験になるだろうが」
『じゃあ、わたしの井戸に……』
さらに顕れたのは、貞子たん。
彼女は説明する必要もないだろう。だって、あの貞子なのだから。
「洒落に成らんわっ!貞子の井戸って、明らかにアウトだろ!」
『とても、涼しい……』
「確かにそうだろうけどっ!」
なんだか悠が忙しくなってきたので、助け船がてら一つ提案をする。
「納涼ったら、肝試しとかか?」
「いや、そういった類は悠にとってもう日常じゃないか?」
澪さんに言われ悠の方を見る。右隣には大妖怪、左側には有名な幽霊。
うん。
「確かに。あれじゃあ肝試ししても意味ないかな」
『なんじゃ。主等は肝試しするつもりだったのか?』
「そうじゃないけど、まあ、そんなところだ」
『コンコンコン♪ならば妾が街で仕入れた、取って置きの怪異の話をしようではないか』