書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch

□プロローグ 『夢と出逢いと』
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プロローグ
『夏、放課後、校舎にて』


BGM 暮色蒼然(原曲)

不思議な夢をみた。

日本のどこか。田舎のような場所で同年代くらいの女子たちがその身一つで空を舞い、きらびやかな何かを振り撒き遊んでいる夢を。
季節は恐らく夏……ぐらいだろう。日の光はじりじりと肌を焼くようなリアルさ、頬を通る風は適度な心地よさを運んでくる。

そしてある少女に目を奪われた。
月の飾りがついた帽子をかぶったその子はこちらを見据えて軽く微笑んだのだ。

刹那、視界が暗転する。

『あら?また夢魂で意識が飛んだ外の人間が紛れ込んでいたのね』

不意に聞こえた女性の声。

『うーん。たいした時間居たわけでないし……このまま戻してしまいましょう。それではよい夢を、人間さん』

そういわれると今度は世界が白くなりーーー

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

BGM甲論乙駁(原曲)

「…………夢か」

なんか妙にリアルだった。ただ思い出そうとしてもなにも思い出せない。

「ま、寝落ちしたときの夢なんてそんなもんかな」

立ち上がりながらくっと延びをして、部屋の様子を見る。
やはりというかなんというか。他のメンバーは先に帰ってしまったようだ。
寝ていた席のそばには書き置きがある。

『千歳くんは起きたらぱっと掃除をして、部屋を綺麗にしてから鍵を職員室に持っていくように。お願いしますね。鳴』

『あと、例の非公式サークルの件なんだけど、優希が一番適任だと思うから頼む!七菜』

「あーそういえばそんな話してたなぁ」

名前はたしか【秘封倶楽部】。一年生が立ち上げた新規部活……もといサークルとしてちらほらとクラスとかでも話題になっていた。
ただ、誘われた子達、入った子達からの反応を聞くとそこまで良くないどころか、誰一人そのサークルに在籍しようとしない。なので創設者の子が一人で活動しているんだけど……。

「個人的には部費を請求するでもなく空き教室でなんかしてるくらいなら目くじらたてなくてもいいと思うんすけどねぇ」

一回だけ部室棟の一室を占拠して怪しげな実験をしていたらしくそれが会長さんの逆鱗に触れてしまったようだ。
その子と会長さんで言い争いになり、その時は副会長である七菜が強制撤収をする事になった。
その子は成績も優秀だったこともあり今回は特にお咎めなし。ただ事前に空き教室を使うことを教師か生徒会の誰かしらに報告する事だけ約束をし、その場は収まったのだが……。

学校側としては、変な事で事件を起こして欲しくないから出来ればすぐさま無くしてしまいたいところだけど、生徒の自主性の尊重する校風もある上にそれ以降は目立った問題行動を起こさないから一部の教師陣からもちょっと煙たがられてるような状況なのだ。
心配する先生がいくらかいるので人望は多少なりともあるのだろうけど。

カサリーーと二人の書き置きをまとめ、片付け終えたところでもう一人からのメッセージにも気がつく。

「つくしさん、相変わらずだな……」

学生鞄の側面ポケットに丁寧に折り畳まれて入っていた手紙を広げ確認する。

『優希くん、今日の議事録は纏めておきますので今度確認してください。あと、鳴ったら貴方が船を漕いでるのをみて少し不機嫌になってたから近いうちに謝っておいてね?

P.S.疲れているならゆっくり休んで、何か甘いものでも食べましょ?例えば……ケーキとかどうですか?  つくし』

抜け目がないというかなんというか……
これは暗に会長の事をフォローしたからケーキ食べたいなーって言ってきている。

……まあ不機嫌な会長と話すよりも少し自分の財布が軽くなる程度なら全然いいのだけど。

パチンと室内の灯りを消し、鍵を閉めて職員室に向かう。そのときに件の非公式サークルの今日の活動場所を聞いて話をしてこよう。


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