書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch
□幕間@
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BGM 上海紅茶館〜Chinese Tea
戻ってきた。それは感覚でわかる。
適度な暑さ。少し籠った淀んだ空気。紙の独特の臭い。そしてーー
「やっぱり落ち着くわね」
眼前に広がる書架の数々。それを見るととても安心した気持ちになる。
向こうで眠りについた際にこちらに戻ってこれているのか、それともこちらで眠った時に見ている明晰夢が向こうの世界なのかはわからない。
ただ、今の私にとってはどちらとも現実なのだ。
「毎回戻ってるみたいだけど体の方は特に寝不足とかは無いのが不安なのよね……」
それよりも私がすべき事は、魔理沙から前に聞いた都市伝説異変についてと……あわよくばその首謀者と顔を合わせること。
ただここ数回で気がついたことがある。
当たり前だが私が向こうに行っている間、こちらも……幻想郷も時が進んでいるようだ。
「前回からどれ位経ってるのかも確認しないと……」
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BGM ツェペシュの幼き末裔
行く宛もなく館内を歩いていると、少し広めの応接室から灯りが洩れているのに気がついた。そして中からは聞き慣れた声がする。
「レミィ?ここにいるのね」
「ん……あぁ、パチェか。遅かったじゃない。ほら、早く入りなさい」
レミィに促され室内に入る。
そこで漸く彼女と話していたのが誰なのかがわかった。
「これはまた……珍しい組み合わせね。と言うかそちらの方は初めましてかしら?」
「そりゃ初めてだな。私が連れて来たんだし」
来客の片割れである白黒魔法使いが妙に自信満々に告げてきた。一方でもう一人は縮こまってしまっている。まぁ吸血鬼姉妹の居城に来ているのだから仕方ないだろう。
「魔理沙、貴女には聞いてないわよ。それよりも……挨拶が遅れて失礼しました。私、パチュリー・ノーレッジと申します。以後お見知りおきを」
そういって軽くお辞儀をすると、慌てて立ち上がり頭を下げてきた。
「へぇ、魔理沙が連れてきたにしては礼儀がなっているじゃない。意外」
「あのなぁ……お前さんが吸血鬼って知った後に更に親しげな奴が出てきたら人間としては肝を冷やすどころか心臓を握られてるような感覚なんだよ。なんか失礼をしたらもう終わりなんじゃないかって」
「そんな程度で私が人間一人を消すとでも思って?よっぽどの事をしない限り平和的ですわよ、私は」
当の彼女はそんな会話を聞いてか顔を青白くしてしまっている。
「あの二人、わざと聞こえる大きさで喋ってるのかしらね?……まぁ、あっちの話は気にしないでいいから、貴女の名前を聞かせてくれる?」
「あっ、はい……宇佐見菫子です」
「へぇ、良い名前じゃない」
「あ……ありがとうございます」
「そんなに畏まらなくてもいいわよ。それで今日は何でここに来たのかしら?あの白黒に無理矢理?」
「違います違います!私から来たいってマリサっちにお願いしたんです」
「相当な物好きね貴女……。っていうか魔理沙?随分なつかれてるのね」
「なつかれてるっていうか基本的に霊夢のところに行くと結構合うからなぁ。来る度に外の世界の……学校?だっけか。その話してもらってるし、そのお礼でな」
「レイムっちやマリサっちにあまり行かない方がいいって言われてる場所を案内して貰ってるんです」
「あら、結構催し事とかで場所を貸し出しているつもりだけど……そんなに危ない場所かしら?」
「んーなんと言うか外来人にとっての危険エリアを案内してる感じだな」
「というよりも、この子は外から来たのね。
貴女たちと普通に話してるからてっきり里の人間かと思ったわ」
「あーその辺り話すと実にめんどくさいと言うかなんというかなぁ」
「一応外の世界で学生やってます。あと、あの……お二人は『オカルト』の事件は覚えてます?」
少し微妙な表情を浮かべて魔理沙は言い淀む。
そんな彼女を尻目に菫子さんが口を開いた
「オカルト?なんか人間の里では外の世界の作り話が実体を持つようになったやつ?そんな噂があるって咲夜に聞いたことがあるくらいかしら」
「私はほとんど知らないわね」
ほとんどこの館から出ないもの。
「その騒動の発端というか……首謀者といいますか……それが私なんです」
「……驚いた。見た目以上にやることやってるじゃない」
「人は見た目によらないって言うからな……その点で言えばレミリアだって見かけによら……いやいや、待とう。な?話せばわかるから。ほら。だから、そんな無言で、真顔でスペカを翳すんじゃない!」
「とりあえず彼女の話を聞いてからでも良いんじゃなくて、レミィ?」
「……そうね、パチェの言う通りだわ。菫子さん、失礼しました。話を続けてくださる?」
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