書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch

□最終話『未知との邂逅、変わる世界』
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BGM 〜真相へ繋がる枝葉

懐かしい夢を見た。
高校生の頃に出会った不思議な少女の夢を……。
月日が経ったがあの日々の出来事はまだ思い出せる。
だからだろうか、その夢を見たのは。

走馬灯のように一瞬で過ぎていくあの夏の日々。
そして最後にーーー

『   』

その夢の中の少女の口は確かに動いていたが、音として自分に伝わってこない。
それを見て寂しそうな、でも仕方ないような……といった感じに笑い、俺の前から消えていった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

あれからどれくらい経ったのだろうか……。
他の住人達に話をし終え、その後は幾つか騒ぎが起きたせいで約束を果たせないままでいた。

周りの事もある程度落ち着いた今日、私は親友に一つ提案をすべく、珍しくこちらからお茶に誘った。

「珍しいじゃない、貴女の方から誘ってくれるなんて。何かあったの?」

「そうね。……えっと、使用人についての相談なんだけど」

「あら、人手が足りなくなったの?小悪魔で大丈夫だったんじゃなくて?」

「うっ……いや、基本的な業務はあの子一人で大丈夫よ。咲夜程ではないけど優秀だから。簡単な雑務ならメイド妖精でもこなせるぐらいだしね」

「ならなんで今さら使用人の話をするのかしら?」

「それは……」

親友は笑みを絶やさずに問いかけてくる。
恐らくは私の口から理由を聞きたいのだろう。
消極的だった私が何故行動を起こしたのか、その理由を。

「……一人、使い魔を増やそうと思ったのだけどね」

「へぇ……続けて」

「その、ちょっと特殊というか……」

「……部屋の空きに関しては咲夜と相談するから構わないわよ?それとも食い扶持が増えるから遠慮してるのかしら?」

「それもあるけど……」

「……パチェ、たまには貴女も我儘を言っていいのよ?」

「……この要望は我儘ですむのかしら?」

「あら、聞いてみないとわからないわ。私は何処かの悟り妖怪みたいに心を読めないもの」

観念して、親友に何に悩んでいるかをぶつける。

「……その、ね。私が外の世界にいる時に良くしてくれた人がいるんだけど」

「……ああ、菫子も言ってたもう一人の協力者……だっけ?あんまりその話題に触れなかったから良く覚えてないんだけど」

「まあ、私からも余り話題にしないでってあの子に伝えてたから。それで、その人をここに喚びたいんだけど」

「いいんじゃない?あの子と知り合いってことはその人もまた何かしら特異な存在なんでしょ?」

「……だったらよかったんだけどね」

「……そういう事か。それじゃ躊躇うわよね」

「あともう一つ、問題があって」

「もう一つ?」

「……男性なんだけど」


言った途端に顔が熱くなるのを感じる。
これには親友も面食らったようで、

「あー……。ちょっと待ってね……なるほど?つまり……えっ、まって。いや、ねぇ?」

普段ではみられない程慌てていた。

「まさかとは思うけど……パチェ、貴女……惚れたの?惚れたのね!」

「……」

無言で頷く。
誰かに自分の心情を言い当てられるのがここまで恥ずかしいだなんて……。

「いや、まさか貴女がねぇ……。いや、私としては喜ばしいのだけど……。その人間、一度試さないと気がすまないわね」

「試すって……何をよ?」

「そいつにパチェを任せて置けるかどうかよ!どこぞの馬の骨ともわからない奴に私の親友は渡せないわ!」

「あのねぇ……」

「そうですそうです!お嬢様の言う通りです!そんなただの一般人にパチュリー様を渡すことなんてできるわけないじゃないですか!」

「小悪魔、貴女いつから居たの?」

親友どころか私の頼れる従者の小悪魔まで話しに参加してきた。

「使い魔を増やそうと……ってところからずっと聞き耳立ててました。なんせデビルイヤーなので!地獄耳なので!!」

「で、どうやってその人を喚ぶつもりなのよ?召喚魔術とかで喚べるわけでもないのでしょ?ただの人間は」

「それに喚ぶにしても、幻想郷にある結界を越えないといけませんからね!これは来る来ない以前の問題ですよ!やっぱりパチュリー様には私がいればいいんですー」

「……契約……というより仮契約まではすませてるから後は賢者と巫女の了承を得れれば……って思っているんだけど」

盛り上がってる二人には悪いが私としても普段以上の覚悟で今回の事に臨んでいるのだ。
無理矢理でも納得してもらうしかない。

「……へ、へぇ、思った以上に本気なのね」

「……かり、けいやく?そんな……パチュリー様専属の使い魔は未来永劫私だけだと思っていたのに……。その殿方にも私にしたみたいなあんなことやこんなことをして篭絡したんです――――」

「落ち着きなさい!!」

暴走しかけている使い魔に向かって水球を放つ。

「レミィはその反応だと、納得は出来てないけど賛成してくれるのかしら?」

「……思うところはあるけどね。でも、貴女が選んだって言うなら、見定めてからでも遅くないでしょ。それぐらいには信用してるわよ……まぁ、ちょっとだけ親友がとられたみたいで悔しいけどね」

「ありがとう。それで、頭は冷えたかしら?小悪魔、貴女はどう思ってるの……?」

「私は断固反対です!空も飛べない、弾幕も出来ない。その上寿命だって……。結局最後に一番悲しむのはパチュリー様なんですから、一時の感情に振り回されてほしくないんです!」

「心配してくれてありがとう。でも決めたことだから。でもこれ以上反対するなら……」

「……うっ。でも、後には引けないんですー!こうなったら弾幕ごっこで決着つけましょう、パチュリー様!」

「意見がぶつかればやっぱりこうなるわよね。……今日はあの白黒じゃないけど、こ……恋の魔法で押し通らせてもらうわよ!」


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