幻想郷入り小説

□第七話a
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第七話「泡沫」

朝、部屋のカーテンの隙間から差し込む日差しで目が覚める。

「……ん?」

夏が過ぎ、秋も間近になった今日この頃。自分の体に纏わりつくじめっとした不快感で段々と頭が冴えてくる。

「……夜中暑かったのか?」

上着はしっとりを通り越してべたつくほど、布団も手でさわらなくても見ただけで濡れているのがわかるほどだ。
あんまり寝汗とかかかないんだけどなとか思いつつ携帯で時間を確認する。

08:31



……遅刻するじゃなくて、遅刻してる。

「……こりゃもう二限目に間に合えばいいか」

ここまで遅れてると急ぐ気にはなれない。
ちっとばかしゆっくりしてもいいだろう。



朝飯を軽くすまし、学校には朝から腹痛が痛いので遅れますと、頭痛が痛いの亜種な仮病の電話をかけてから、少し遅めの通学路を歩いていた。

川沿いに広がる木々の木陰を渡り歩くようにゆっくり歩く。
春に咲き乱れた桜も今は緑の葉がしげるだけ。その葉も秋に近づくにつれ徐々に木から落ちていく。

良く歩く道だが一人で歩くとこんなにも静かなのか。
まあ、通学時間過ぎてるんだけどな。






「はよー」

ガラッと教室の引き戸を開けて、いつも通りの挨拶をする。ちょうど授業と授業の中休みなので先生には合わなかった。

「思ったより早く来たな、伴也」

よくつるんで遊びに行く奴が話しかけてくる。

「これでもゆっくり来たんだがなー。たぶん普通にしてれば一限の終了10分前とかにはついてたとは思うけど」

「あー、前野くん。なんかセンセーに面白い言い訳したみたいじゃん」

続けざまに隣の席の女子に話題を降られた。話題といえないものだけど。

「いや〜腹痛が痛いってありのままに言っただけだよ」

周りの席から“それ同じ意味じゃねぇーか”とか“頭痛が痛いって言ってよー”など色々と言われてしまう

他の声にかき消されてしまったが、もっと面白いことも言ってるかもなーと何気なし考える。





その後授業は滞りなく進み、何もイベントは起きずに下校時間となった。


夕方の独特な空気が何だかしんみりとした気分にさせる。寄り道をしたい気分だった。


「夏休み入る前は下校時に秋葉に行ったけな」

いつもの連中と。
あのときは何を買いに行ったっけ
そう考えるうちにいつも通りの下校ルートになった。



「ただいまー」

自宅に帰り、返事がこない帰宅の言葉を呟く。

部屋に入り着替えをすますといつの間にやら夜も更けて、適度な微睡みが俺を襲った。


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