幻想郷入り小説

□8話C
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これは、現代を生きた悪魔の話……

8話 エピローグとプロローグ

全てを識る悪魔のお話……



決闘の後、目が覚めたら病室らしきにいた。
どうやらあの後に助けられたらしい。あの時に受けた傷は自分の回復力と外的要因で既に塞がっていた。
その後は薬師の助手が時折訪れ、検診をし、その後は何もなく時間が過ぎていく。
何日か経って状況が飲み込めた時に一つの疑問が浮かんだ。
なぜ私は生きているのだろう…と。
恐らくは勝者の……あの人間の気遣いだろうか。敗者を生かして何の得が?やはり人間の考えることはわからない。いままでも、これからも……。

思案に暮れていたら既に夜明けも間近。
朝焼けを見れる方へと顔を向け、今日もまた退屈な日が始まると思うと溜め息がこぼれた。

日が徐々に登り、いつも通り薬師の助手である彼女がくるものと思っていたら……


「おや、貴方は……久しぶり、といったところですかね?」

「そうだな。えっと……伴也だ。アンタの名前は?」

どこか気まずそうな顔で私を負かした人間がやって来た。

「……レクトです。それで、敗者を消しにでも来ましたか?」

「誰が敗者だ。つかあの決闘は魔理沙が言うには引き分けだよ。どっちが勝ったわけでもない。お互い重症……痛み分けさ」

「…正直なんですね、貴方は。そこは嘘でもふんぞり返って敗けた方を消してしまえば楽なのに」

「それを言ったら、あんただって回答聞く前に俺を消せばよかったんじゃねぇの?翠にあそこまで執着するってことは怪異というか人じゃないんだろうし」

「……いまそんなことをしたら、姫にどやされてしまいますよ」

「……姫、姫って本当にあいつそういった血筋の家の娘なの?向こうじゃ特にそんなこと言われなかったんだけど」

「所謂我々怪異、人外の存在にとっては有名ですが、人間からすればいたって普通、ハーフやクォーターみたいなものですね。……しかし、貴方は警戒心というのが無いんですか?無防備に私の側に座り込んで。急に私が襲うかもとか思わないのですか?」

「なるほどねぇ…ん?いや思わねぇよ。俺とアンタは互いに一人の女性を奪い合った仲だ。しかも決闘してお互いに生き残った…何かの縁だろ?仲良くしようぜ、レクト」

私という人外を前にして只の人間と同じ様な振る舞いをする伴也。
あぁ、なるほど……これは彼女も好いてしまいますね……。
そう思ってしまうほど隣にいる少年は純粋で、自分が信じたかった人間という在り方を体現している様に感じられた。

「……ふふっ、バカというか大物というか……でも、貴方の……伴也のそういったところを姫が好きになったのかもしれませんね」

「よせやい、照れるだろ」

「でも、私も諦めたわけじゃありませんから」

「あ?もっぺんやるかこんにゃろう?」

「今度は手荒な真似をせず、貴方のように馬鹿正直に思いを伝えようと…」

「……そうか、なら一度だけ俺はなにも見なかったし聞かなかったことにする」

「ふふっ……ありがとう、伴也」

「そうだ、聞きたかった事があるんだけど」

「なんでしょうか?」

「レクト以外にも現代にはそういう、人ならざる存在っているのかな?」

「……どうしてそうお思いで?」

「別に居るとわかったからってこっちから手を出す訳じゃないけどさ、アイツを護るためには色々と知っておいた方がいいかなって」

本当にこの少年は……一途で、変に正直で……。
あの時出会えていたのがこの少年ならばと思うほどに輝いて見えた。

「……なるほど、ならば私の知り得る全てを教えましょう。伴也もいまは療養中ですよね?」

「そうだな。もう少しで退院で元の世界に戻るんだ」

「なら退院後に少し時間をもらえませんかね?
あと、人外や怪異、魔法とかに詳しい書物があれば嬉しいのですが」

「あー…うん詳しい本はあると思うけど、外の世界のとなると難しいかもしれないな」

なんせ、幻想郷だし。と彼は続ける。


例えそうだとしても、私は彼に伝えなくてはいけない。

私が識る全ての事を。


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