私と不思議な同級生(仮題)

□遊戯王な話・夏
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これは、8月に「ストラクチャーデッキR -ドラグニティ・ドライブ-」の発売が目前に迫り、いてもたってもいられずいろんなカードショップで【ドラグニティ】に採用できそうなパーツを探していた時の話だ。

「……おぉ、新規でチューナーや非チューナーにシンクロチューナーの子出てたんだ……気が付かないとは、不覚……」

最近は【ハイランダー】で色々やってたからちょっと情報追えなかったのよねぇ……。
収録自体は結構前だけど、そんなに箱で買ってないときのパックだし、持ってないのも仕方ないかな。
非チューナーのはストラクにも来そうだけど、シンクロチューナーって……同パックの《アスカロン》に繋ぎやすくするためかなあ……?そもそも《ファランクス》自体が複数必須だったから今のところ【レヴァライダー】を手を変え品を変えで強化しているわけだけど……

「ストラクに《ファランクス》再録しないかなぁ……《ドラグニティアームズ》路線だと厳しいかな」

そのあたりは販売元次第だからあまり贅沢言えないんだけどね。

ショーケースを眺め云々唸っていると、さっきまで静かだったフリースペースの方が騒がしくなっていた。

興味本位で覗いてみると、柄が悪い人と男の子が言い合いをしているところで……ってあれはもしかしてクラスの?

まさかこんなところにもトラブルが迫っているのかと思いつつ、かといって見て見ぬ振りもできない私は、おそらく同じクラスの男子の元へ足を運んだ。

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「だから、なんでオレがそっちの言うこと聞かなきゃならねぇんだよ!?オレ、アンタに迷惑かけてないだろ?」

「いや、そうだけど…!こっちは小さい子に賭け(アンティ)ルールで勝負を挑んで一方的にレアカードを奪う行為を見逃せないって言ってんの!」

先ほど少年から賭けルールによって奪い取った《ヴァレルソード・ドラゴン》の20thシークレットレア……今でも中々の価格を推移するレアカードを眺めつつ元々の持ち主に近づいていた。

「お互い了承の上だから関係ねぇだろっ!なぁ、ボウズ」

子供からすればほとんど大人のような相手が、威圧感をあらわにしながら無理やり首を縦に振らせようとして、カードを奪われた少年へと近づく。周りにいる数名の男たちも笑いをこらえながらこちらを見ている。……こいつらグループだったのか。
被害者の少年はほとんど泣きそうな状態だ。

あぁ、せっかくの休みだっていうのに……。

『だから言ったろ?今日はここに来れば面白くなるって』

さんざん僕の事を苦しめていた悪霊が、とあるカードの姿を借りとても厭らしそうな声でこちらに語り掛ける。
これだから、コイツの提案には乗りたくなかったんだ。

『テメェの苦しむ顔が何よりの楽しみだからな。せいぜい苦しんでくれや!』

そう吐き捨て、気配が消える。全く、悪霊とはいえ精霊ならアニメの様に手助けしてくれてもいいというのに……。
もしくは同じクラスの御堂さんの姉の方みたいに可愛げがあっても……いやそれはそれで裏がありそうだ。

一つため息を吐き、未だに己の非を認めない相手に一つ提案をする。
幸いなことに、ここはカードショップ。それなら同じ土俵で勝負するだけだ。

「それじゃあ、僕と決闘(デュエル)してくださいよ。もちろん、賭けルールで。僕が勝ったらアナタはその子に奪ったカードを返してやってください」

「あん?それじゃ俺が勝ったらどうすんだ?」

「……《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》を賭けますよ。もちろんこの間のプリズマティックシークレットのね」

少し経った今でも数万円での取引がされる《ダーク・レクイエム》。あんなにレアカードにご執心ならこれをちらつかせれば乗ってくるはず……!

「……いいじゃねぇか。この勝負乗った!」

「交渉成立、それじゃあ」

「賭けデュエルだからな。審判をつけようじゃねぇの」

「……そうですね」

そういうことか…。ルール外でのイカサマ……全くもって救えない奴らだ。

「それじゃあ、そこの兄ちゃん、頼め―――」

「デュエルの審判!?はいはい、私にやらせてください!」

「誰だてめぇ!ひっこんで……」

「いやー、遊戯王ってルールが一見複雑そうに見えて複雑じゃないですか?私こう見えてインストラクターの試験に通ったこともあるんですよ?まぁ学校の都合でインストラクターやれてないんですけどね。それなので、多分ここに集まってる皆様より適切にジャッジできると思いますよ?」

彼女は……日向さん?どうしてここに……。

日向さんはこちらに気づくと、相手側に見えない位置から小さくブイサインを送ってきた。
多分店内にいてこの騒ぎを聞きつけて割って入ってくれたんだろう。クラスメイトとしてでなく、通りすがっただけの人として。

「それは頼もしい!それじゃあ彼女に審判をお願いしましょう!……別に、そこのお兄さんとグルってわけじゃなきゃ大丈夫なはずですよね?」

少し大仰に、相手のグループ外の他の客や店員に聞こえるように芝居がかった感じに彼女の言葉に乗る。

「ぐっ……ああ。構わねえよ。どうやったってオレが勝つんだからな!」

これでどうにか公平な勝負の席に着くことができた。

「それじゃあ、お願いしますね」

あとは勝って、あの子のカードを取り戻すだけだ。

「「決闘(デュエル)!!」」


竜胆くん
VS
怖いお兄さん

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