私と不思議な同級生(仮題)
□遊戯王系の合同作品の一つっす
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待ちに待った8月29日。今日はついにあれが発売する日だ。
ネットで情報を知った時は驚いた。まさかあの子たちが蘇るなんて……!
「元のストラクは10年前でしょ?嘘、私小学生じゃん……」
時の流れの速さに落胆しつつ、あの日見たテレビのCMを思い出す。
『全ての敵をなぎ払え、ドラグニティアームズ−レヴァテイン!』
はっきり言って一目惚れだった。子供ながらにあのモンスターの眼光に、佇まいに心を奪われてしまった。
そんな彼らが今の、11期のカード群とも戦えるようになって帰ってきてくれるなんて思ってもなかったのだ。
「しかもエクストラデッキのカードもついてるって……昔のが嘘みたい」
今日発売のストラクが3つ入った手提げを見ながら、足りないパーツのことを考える。
「基本的には安定のストラク3箱で足りるけど……。なんかピンと来ないんだよね……」
昨夜遅くまで考えてたレシピを改めて確認する。必須級のパーツはそろってるし、新規カードのおかげで安定感は出たのだろうけど。何かが足りない。
「うん、これは実際に回さないとわかんないやつだね。どっかにフリースペースあるお店ないかな」
品揃えの多さで秋葉原まで足を運んだけど、発売記念や大会の関係でどこもかしこもフリースペースは満員、店内は人で溢れる状態だった。
軽くショップに入って空いてるかを確認してそそくさと出ていくを繰り返し、気が付けば秋葉原の中でも結構外れの方まで来てしまった。
「うぇ……参ったな。こっちのほうは何もない……あれ?」
普段足を運ばない通りだったからか、ここにカードショップがあることを知らなかった。
「……ワンダー、か。ここじゃあんまりスペースもなさそうかな。でも、行ってみよ」
戸を開け始めての店舗に足を踏み入れる。
「いらっしゃい」
意外にもフリースペースはあって利用者は0、シングルの品揃えはそこそこよさそう。
「あの、ここってスペース使用料いくらですか?」
「400円だけどウチで300円以上買ってくれれば無料だよ」
「ありがとうございます。あと今日って大会とかやりますか?」
「ごめんね、うち大会はあんまりやらないんだよ」
「本当ですか⁉ いや調整したかったからむしろ好都合です!えっと、せっかくなんでショーケースの―――」
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ちょっと買いすぎたかな、いや仕方ない。目に入ったあのカードもいけないんだ。
予定外の出費は痛かったが、フリースペースに座りながら改めて購入したものと、家から持ち出した相性がいいであろうカードを並べる。
「とりあえず基本の非チューナー、チューナーは三枚で、カテゴリ外はいったん全部外して……Vジャンの付録は……三枚いれちゃえ」
「御剣さんおはよー」
「いらっしゃい……って明か。もうこんにちはじゃない?」
「そっか、もうお昼過ぎてるのか!ってそんなことより今日は何か面白いものある?」
「面白いものというか……面白い事、が起こってる。ほら」
「えっ……おいおいまじかっ!……でもなんで!?」
「ひとまずメインデッキは形になったかな?エクストラのカードはリンクの……なにこれ、いい効果じゃん。シンクロは、アスカロンにゲイボルグ……あれこれだけ?なんか新規があるって……あ、パックに入ってるんだ!それじゃ開封開封っと」
「今日はストラクチャーデッキRの発売日だからね。偶にはこんなことがあってもいいんじゃない?」
アスカロン、ゲイボルグ、ともに神話や逸話が残る武器の名前だ。それにリンクモンスターはローマ神話の……。
このカード名に刻まれた神話や物語が垣間見えるときが一番テンションが上がる。そして同時に召喚口上の創作意欲も湧いてくる瞬間である。
「アラドヴァル、バルーチャ、ガジャルグ、ヴァジュランダ、竜の渓谷……シンクロは全部武器の名前だよね?ていうか3箱でエクストラ上限超えるんだ……最近のストラクすご…」
しかも特殊仕様でこの5枚はランダムで1枚がシークレットレアとは……。
「大型は各一枚、バルーチャは展開に繋がるから二枚。エンジンのガジャルグは二枚、経由のヴァジュランダは一枚、ロムルスは一枚で……。最後にこのカード達を加えれば……!できた!!」
私流ドラグニティ!ガチじゃないし対応できる範囲は狭めかもしれないけど、あの頃憧れた竜騎士たちと戦うためのデッキ……。あとは回るかどうかだけど。
「あっ、その前に……」
今日買ったストラクに入っていたレヴァテインを昔のストラクに入っていたウルトラレアのものと取り換える。
別にこれで回りやすくなるとかそんなことはないけど、できるなら昔からの相棒と戦いたいからね。
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