記念・特別編
□夏特別企画 リレー小説
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いろいろ考えている内に再び懐かしのベルの音がなる。店内には俺と悠、そして店員である彩音さんしかいないので、必然的に来客ということになる。
「じゃあ、しんごくんは予定詰まってるんだ?」
「詰まってるってほどじゃないけど、それに向けての練習もあるから」
「だからよー、夏休みに入ったんだからとりあえずナンパ行こうぜナンパ」
「いや、とりあえずナンパっておかしいだろ?」
「おっ、全員揃ってきたな。三人とも、こっちだ、こっちー」
やってきたのは、ラスタでお世話になっている、天野澪。
以前ラスタで会い、それから時々遊びに行ったりしている、高井しんご。
それから、これまたラスタで知り合った、赤城零夜。彼の悠並みに突拍子もない行動にやや振り回され気味だ。
「おー、悠。どうしたよ?いきなりメールして」
「ちょっと相談があってな」
「優希くんも呼ばれたのか?」
「下校途中にメールが来てその足で」
「あっ、優希のとこは今日終了式だったんだ」
「彩音ちゃん彩音ちゃん、皆が冷たいんだけど……」
「知らないわよ。それより、今来た三人。なんか頼みなさいよ」
「俺コーラー」
「それじゃあコーヒー貰えるかな?」
「俺は……烏龍茶で」
「はいはい、泥水三つでよろしいですね?」
「「「よろしくねぇよ!」」」
「やーねぇ、冗談に決まってるじゃない」
全く冗談に聞こえないんだけど……
「なあ、ここ喫茶店だよな?」
「澪、彩音が店番してる時点でまともな接客されると思わないほうがいいぜ」
そうなのか……これが平常でなく、彩音さんが店番だからこうなのか。
「それじゃあ零夜、普段はどうなんだよ」
本当に思ったことを聞いてみた。普段がいい店なら、今度からここにも──
「普段?そうだなぁ……あいつ以外にドMが一人働いてたかな?」
足を運ぶことはなさそうだ。うん。
「なぁ、俺の話聞いてくれないのか?」
そうだった。あまりの展開の速さに少し忘れていた。
「そういや、悠がメールなんて珍しいを通り越して驚いたんだけど」
「いや、全員に連絡する時にはメールするだろ?」
当たり前のことなんだけど、悠に言われるとはなぁ……。
「なんか凄く失礼な事を考えてないか?とりあえず、皆を呼んだ理由。それはな」
そこで一旦言葉を切り、ゆっくりと口を開く。
「冒険しないか?」
「いったいどうしたんだ?その……藪から棒に」
「いいえ、壁から釘です」
「その返しほんとに好きだよな、悠は」
「さらに、空から槍だッ!」
「わけわかんねぇよ!」
一番に言葉を発してしまい、悠の方を見ると、彼は言うよな?といった表情をしそれに折れた形で藪から〜の下りに入ってしまった。
「あーもうっ!騒がしくするなら店から出て行って!!」
「「「すみませんでした」」」
彩音さんの叫びに、俺、しんご、澪さんの三人は即座に平謝り。
しかし、後の二人は
「あーあ、胸の小さい奴は心も狭いのかねー、悠さんや」
「ほむ……間違えた、ふむ。確かにその節は一理あるな。根拠は無いけど、俺の知り合いにも当てはまる所があるな」
「コロス!」
小気味のいい音と共に、テーブルに数本のアイスピックが突き刺さる。
え、カウンターから投げたのか?
「次は当てるわよ?」
「ちょっと、彩音さん!?狙うならその二人にしてくれ!俺達は一切関与してないんだぞ?」
「ゴチャゴチャ言ってたらアンタらもやるからね!手始めにあの二人を始末するから、それまで大人しくしてなさい!」
澪さんが抗議するが聞く耳持たず。こうなると、安全な道を選び脱出するしかない。
「おっと、これじゃ落ち着いて話も出来ん……仕方ない。皆、やっぱラスタに集合な。彩音ちゃんは各自どうにかしてくれ」
いつの間にか出口付近までたどり着いていた悠はそう告げるなり、さっさと出て行ってしまう。
「ちょっと、悠!?無責任だな、ホントに!」
しんごも声を荒くして、悪態をつく。
「とにかく、早めにここから逃げましょう。幸い彩音さんの相手に零夜がいるし。まずは店から出て、後は三人別行動でラスタにむかうって感じで。これで動けますかね?」
「いや、たぶんこの案しか無いと思う。しんごもこれでいいよな」
「俺も、それでしか出られないと思う」
「それじゃ、意識が零夜に向いてる内に、さっさと逃げましょう!」