現代入り小説(長編)
□第一話
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「いらっしゃい」
古本屋『夢幻堂』
古本屋というよりも、古書店って感じの方が強い気がするが……
ここは古書から最近の本や、小説も取り扱っている俺のオススメの古本屋だ。
ここでは時間を忘れて本を探すのに夢中になってしまう。
「ここらは前に見たしな……ん?」
古書が平積みされている場所に無造作に一冊だけ置かれている本があった。
「なんだこれ?ざ ぐ、ぐり?ぐりもいあ?ぐりもわ……The Grimoire?」
読み方がグリモワであっているのかは不安だが、その本を開いてみる。
「うわっ、何じゃこりゃ?」
中は見開き一杯に書き連ねられている数式の様なもので埋まっていた。しかも全て英語。
「読めたもんじゃないな、これ」
しばらくページをめくっていると、一カ所だけ日本語と言うか……行書体を走り書きしたような文字で何か書いてあった。
「買って、解読出来たらまた帰しに来ればいいか」
そこに書かれていた言葉が何か知りたくなった俺は、グリモワを片手にレジに向かった。
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「まいどありー」
「古本にしては痛い出費だったかな?」
500円。それがあの本の値段だった。
今の所、安いのだか高いのだかよくわからない。
夢幻堂を出たのは大体10時半。
これなら昼までには帰れるだろう。
「今日は冷や麦でいいよな……何も作る気が起きん」
前に纏めて冷や麦を買っといたから、後二日は冷や麦で過ごせるはず。
誰かが遊びに来りしたら別だけど。
「ただいまー」
家に着いたのは11時42分。
これなら12時頃には食べ始められるはず……。
そう考えながら、リビングの扉を開けた。
そこには……
「……はい?」
何故かソファーで規則正しい寝息を立てて眠っている少女の姿があった。
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