書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch

□プロローグ 『夢と出逢いと』
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BGM紅桜〜 Eastern Dream(原曲)


それから幾日か経ったとき、また不思議な夢を見た。


多分、あの時見た夢の続き。
場所も、空気も、日差しの強さも同じ……違うのは前に見ていた距離よりも近づいているくらいか。
良く目を凝らすと、大勢いる少女のなかにどこか見慣れた服装の子がいる。

そして前と同じ、あの少女と視線があった時に視界が暗転する。

『成る程、縁が結ばれていたのですか……原因はあの夢幻病の子?……いや、あの件については解決したはず。……いいですわ。貴方のその緣を今回の異変解決に利用させていただきます。どうか役にたってくださいね』

続く声はうろ覚えだが違っていた。
そんな気がする。

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そんな夢を見た放課後。また菫子の秘封倶楽部の活動チェックをすることになり、今回は図書室へと来ていた。

「うげっ……また来たんですか?先輩。」

「生徒会の仕事だからね」

「毎回ご苦労様です……。じゃあやることやったので私は帰りますね」

「お疲れ、鍵は置いてっていいよ。このまま整理とかしていくから」

「……わかりました。それじゃあお願いします」

そういうと菫子はコトリと入り口近くのカウンターに鍵を置き、少しだけこちらの様子を一瞥し部屋をあとにした。

「さて、多分すぐ終わるけど頑張りますか」

パンっと顔を叩き、ここから作業を始めようとしたときだった。

ガタンッ!と図書室に似つかわしくない音が響いた。

音がしたのはカウンターの奥、何があるのかわかるのは恐らく図書委員やここを良く使う人ぐらいだろう。


「あれ、おかしいわね……ウチにこんな書架ってあったかしら?……ちょっと、小悪魔ー?」

続けざまに聞こえてきた声に俺はハッとした。
聞き間違えでなければ、思い違えでなければ、あの声は確かに……!

急ぎ足で声のした方に駆けつける。

「……っ!やっぱり」

そこにいたのはあの日家に現れ、唐突に消えた魔法使いの少女だった。

「久しぶり……だね」

「アンタ……何者?なんでここにいるのよ?」

「えっ?」

再び会った彼女は、まるで別人のようで……
言葉使いは粗暴になり、神秘的な雰囲気は皆無だった。

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BGM 魔法少女達の百年祭

「全く、美鈴ったらしっかり門番してくれないと……魔理沙ならともかくこんな普通の人間を通すなんて……あぁ、とにかく。お前はさっさとここから出ていくこと。いい?」

「いや、いいもなにも……ここはウチの学校の図書室なんだが……」

「学校……寺子屋の事よね?何を言ってるのかしら。人間の里にあるのは貸本屋ぐらいでしょ?
ここは紅魔館の地下図書館。誰も侵すことの出来ない私の聖域なの。わかったらさっさと……」

「ここが地下と言うなら、窓の外から見える景色はどう説明するんだ?」

言葉の端々にトゲのある言い方だったからこちらの言い方も少しきつくになってしまう。

「ほんっと何を言ってるのかしら。窓の外なんて……窓の……外……」

この図書室は最上階にあり、カウンターの奥は休憩スペースも兼ねているのか大きめの窓が備え付けてあり、屋上に面する所は引戸になっていて外に出れるみたいだ。
そんな部屋から窓の外を見た少女はーーー

「………………は?」

なにこれと。窓の外の風景を見たまま立ち尽くしていた。

「え?なにこれ?どいうこと?ちょっとアンタ、ここって幻想郷よね?」

「ここは東深見高校の図書室だ。生憎その『げんそうきょう』という場所じゃない」

「嘘でしょ……」

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