書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch
□一話 『夏休みの夜』
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BGM 夏明き(原曲)
「……ありがとう、今回はここまででいいよ」
と彼女の問いに返す。
思った以上の情報量でまだ頭の中に入りきってない。
「また聞きたくなったなら今度はしっかりと聞きたいことを纏めておいてくれる?」
「そうだね。もっと分かりやすく聞く事にする……」
恐らくは彼女なりに噛み砕いて説明してくれてはいるのだろう。
「聞いておいてなんだけど、こんなに喋ったりして寂しくなったりしないのか?」
先程の寂しそうな横顔が頭をよぎり、つい聞いてしまった
「あっ、言ってなかったかしら?
私なぜか知らないけど寝ている間は向こうに戻ってるみたいなのよ。っていってもこちらで起きちゃうと無理矢理ここに戻ってきちゃうんだけどね。
確か魔理沙が都市伝説異変がどうとか言ってたかしら……」
「なるほど……って、えっ?戻ってるのか!?」
「原理はわからないけどね。それだからこの理由が解ればすぐに戻れると思うわ」
「良かった……ここに来てからなんの進展も無いかと思ってたんだけど」
「そうね。こっちと向こうで調べられるから情報量としても二倍だろうし……光明が見えるからいい加減少しくらいこの家の外の事も調べさせて欲しいのだけどね」
「近場ならその格好でもいいんだけど、遠出するとなるとやっぱり別の服が必要かなぁ……」
「また私に人間臭い物を着せる気?」
「その格好で外に出て大丈夫ならそのままでもいいけど」
「言ったわね?外の世界と言えど幻想郷と地続きなんだから平気に決まってるじゃない」
意気揚々と玄関から外に出たパチュリー。しかし一分とたたずに戻ってきた。
「どうだった?」
「……涼しい服を貸してちょうだい……」
魔法使いと言えど、真夏の暑さには敵わなかったようだ。
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BGM 風光明媚(原曲)
最近着ていないシャツに七分丈のズボン、独特な帽子の代わりによくあるキャップ。それらを来ている姿を見ると一見普通の女性と変わらない。
身長差というか男物のせいかダボついているのが彼女の可愛らしさを引き立てているようにも見えた。
「……なんなのよ、じろじろ見て。私には似合わないとか思ってるのかしら?」
「いや、逆だよ。凄く似合ってる」
「そう真面目に言われると恥ずかしいのだけれど……ありがとう」
「……ふふっ、どういたしまして」
「お世辞でも嬉しいものね、そう言って貰えると」
「いや、お世辞のつもりじゃないんだけど」
「アナタねぇ……まあいいわ。……でも、着替えたけれどまだ暑いわね」
「そりゃ夏だしな……といってもこの時間は涼しい方なんだけど」
少し日が翳り、昼間のまとわりつくような暑さは幾らか収まって、時折吹く風が溜まった熱気を退かしていく。
家の外を見たいというパチュリーの要望で外に出たのだが行き先とかは何も決めておらず、ひとまず近くのコンビニまでという事にして二人でのんびりと歩く。
「夜になっても明るいっていうのは本当なのね」
「もっと遅くなるか停電でもしないとこれ以上暗くはならないね」
「でも、星は見えるのね。それは向こうと変わらないわ」
「郊外とはいえ都会だからなぁ……もっと都心から離れれば夜空は綺麗に見えるけど」
ここと地続きだけど隔離されている幻想郷。やっぱり向こうでは夜空は綺麗に見えるのだろうか。
「それでこれから行く……こんびに?ってどんなところなの?」
「いつでも開いてる便利なお店ってとこかな」
「……夜中も開いてるの?時間の感覚なくなりそうね」
「現代人は時間の感覚が狂ってる人多いからね……仕方ないんだよ」
いくら夕暮れで涼しくなったとはいえじんわりと汗が出てくる。
目的地につくまでにお互い暑さを紛らわす為に他愛もない話を続けた。
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