書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch

□三話『焦燥』
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BGM ニュースハウンド (原曲)

家から少し離れたところで、先ほどの会話の中で気になったことを菫子に確認する。

「門番に追い返されたって話した後にさ、本来なら客人として向かえるようにしてるはずって話してただろ?」

「ええ、話しましたね」

「あの時にさ、なんで「まさか」って呟いたのかの理由が知りたい」

そう訪ねると特に隠す様子もなく、さっき話してたみたいな口調で彼女は話始めた。

「あー……やっぱり聞こえてましたか……。まぁパッチェさんに聞かれてなかっだけましかな。
まだそうと確信できた訳じゃないし、私の思い過ごしって可能性もあるんですけどね……。
恐らく向こうで何かがパッチェさんのふりをしている……と思うんです」

「……オカルト的なものに関しては多分俺よりも菫子の方が詳しいし、向こうの……幻想郷に何があるか、何が起こり得るかってのも分かってるのは君だから、まずは菫子が考えていることを話して欲しい」

「あまり断定した言い方はしたくないんですけどね……わかりました。まずは何者かがパッチェさんに入れ替わって向こうで活動していると思うんです。恐らくは少しだけ本物との記憶を一方的に共有しながらです」

「一方的に?」

「ええ。そうでないとこっそりと外から幻想郷に戻る方法を探す手伝いをしている私を急に追い返すって言うのは説明が着かないというか……うっかり話そびれてたって可能性も少しだけ考えましたけど、さっき話しててそれはないなって思いまして」

「そもそもこっそりと探さずにさ、紅魔館の当主のレミリアさん、だっけ?彼女に話せば……」

「親友が寝ている間に外の世界で男とよろしくやってるなんていえないでしょーが!!
そうでなくても、向こうから外に出るなんてほぼ自滅行為に近いというのに……。
あと多分だけどめちゃくちゃヤバい事になりそうなのでそんな真似は出来ないです。
極力誰にも感づかれずに帰還する……それは夕方ごろに会ったときに話してて決まった方針なんですけど……」

「夜になったら今の状況って訳か……。一方的な記憶の共有って言うのもそこから?」

「ですね。客人として外と繋がりがある人物が訪れるようになるって断片的な情報を手に入れたなら、何をされるかわかったもんじゃない。それならば入れなきゃいいって話だと思います。門番さんも申し訳なさそうに苦笑いしてましたから多分急に入れるなって周知させたような気もしますけど」

「なるほどな。……ってまさかその共有するタイミングって……」

「恐らくはパッチェさんが向こうに戻る…眠っている間でしょうね。でも向こう側から一方的に繋がりを絶ったのか知りませんけど、今は戻れてない。だから事情を知ってる私だけがこの小規模異変を解決できるって状態なんですよね」

心なしか菫子の声は弾んでいるように感じてしまい、そんな彼女に釘を刺すように無茶だけはしないようにと声をかけた。

「……本当に危なかったらレイムっちやマリサっちにちゃんと話しますって。私がそんなに無茶をするように見えますか?」

「残念ながら見えるから言ってるんだよ……。で、その犯人というか元凶に心当たりあるのか?」

「都市伝説がいまだに実体化してるというならドッペルゲンガー辺りが濃厚なんですけどね……。でも、はっきりと言えないんですけどそれとはまた違うような気がするんです。仮にそうだったとしても何でパッチェさんが外の世界に来ているのかが分かりませんし。一先ずは何かしらの都市伝説が原因ってことにしておきましょ。あと、伝えるにしても変に不安を煽るくらいなら黙っておいた方が得策かなと思います」

「そうだな……専門家でも把握しきれてないってなるとほぼ手詰まりだし。何かあるまでは黙っておくよ。
あと、ちょっとした頼み事なんだけどさ、そっちの都合が良いときで構わないからまたパチュリーと喋りに来てくれないかな?」

「それくらいなら構いませんよ。……でも、先輩の家じゃなくて普通に外で会わせていただきます。あっ、ここまでで良いですよ」

「ありがとな。それじゃあ気をつけて……本当に無茶だけはするなよ?」

わかってますよーと呑気な返事をしながら帰っていく後輩の後ろ姿をどうにも不安な気持ちでしか見送れなかった。

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