書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch
□四話『幻想少女逹の小休憩』
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BGM 幽境(萃夢想)
「この後どうしましょうか?」
「何も無いなら解散でいいんじゃない?」
確かに今日は情報共有の為にここに来た。普段なら、じゃあこれでおしまい。で済むけれど。なぜか今日はそんな気持ちになれなかった。
「パッチェさんさえよかったらなんだけど……ウチ、来ます?」
そう声をかけたのはさっきのやけに寂しそうな顔が気になったからだろうか……自分でも根拠がわからない。本当になんとなく提案したのだ。
「……面白そうね、お言葉に甘えて上がらせてもらおうかしら」
そう返事するパッチェさんの声はどことなく弾んでいた……ような気がした。
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BGM 顕現した伝承の形(原曲)
「以外と普通の部屋なのね」
部屋に入るなり率直な感想を投げてくる魔法使い。
そりゃあの地下図書館に比べたら大概のものは普通になるとは思うけど。
「何を期待してたのかは知らないけど、こんなものよ、一般的な女子高生の部屋って」
彼女に楽にしててと言って自分はクローゼットの中を漁っていく。
「それで、部屋につくなり貴女は何を探してるの?」
「んー?いや、パッチェさんもずっと服を借りっぱなしなのは辛いだろうから、あまり着なくなった服でもと思ってね」
確かこの辺りに……
「あったあった!」
じゃーん!と座る彼女に見えるように掘り出したものを広げてみせる。
「それって……浴衣?」
「浴衣じゃなくて甚兵衛っていってね……ざっくりいうと気楽に着れる室内着よ。浴衣みたいに帯とかしなくていいし、涼しくて、今日みたいに暑い日にはおすすめなやつ」
「へぇ……そうなの……。着てみてもいいのかしら?」
「もちろん!気に入らなければ無理に持ってかなくてもいいからとりあえず着てみて」
広げた甚兵衛は薄桃色となかなか私には着るハードルが高いもので、このままだとタンスの肥やしになったままゆくゆくは処分となる予定だった。
「どうかしら……似合ってる?」
なんと言うことだ……服は着る人によってここまで印象が変わるのか……。
「ちょっと……何か言ってくれないかしら?」
「あっ……大丈夫、大丈夫です。似合いすぎてて言葉がでなくって」
「そ、そうかしら……?でも本当にこれをもらっちゃっていいの?」
「いいのいいの。私には似合わない色だったから」
「ありがとう、大切にするわ」
向こうに持っていけるかはわからないけどね、と少し申し訳なさそうに彼女は続ける。
「たぶん持っていけるはずよ。私もこっちの道具をよく……じゃなくてたまに、たまーに森近さんの所に持っていく時あるし」
それを聞き驚いた表情で魔法使いはこちらに詰め寄ってくる。
「ちょっと待って、こっちの道具を向こうに持っていけるの……?
今更なんだけど貴女は実体を伴って幻想郷に行けている、のよね?」
「いやだなー、肉体がなければ向こうで会った時に出されたお茶やマリサッチに触れないじゃないですか」
あっけらかんと答える私に、大きい溜め息をつきながら彼女は話し出した。
「いや、初めに確認しなかった私もいけないわ。……つまり、向こうで私に成り代わってる奴は私の身体を使っている訳じゃないのね」
「んー恐らくは……。パッチェさんが私と同じ状態でこっちに来ているとするならば、ですけど」
「じゃあ、同じ状態よね。触れられるのですもの。あとはそれをどうやってレミィに伝えるか……」
「……伝えていいんですか?」
いままで気づかれないようにと進めていたのにここで伝えるのを良しとする理由がわからなかった。
戻れる確証もないって言うのに。
「私の安全がわかればあとは黒幕をどうにかするだけよ。能力まで真似られてると少し厄介だけど、偽物程度に吸血鬼を一回休みにさせることはできないだろうし……」
それに、と魔法使いはつづける。
「一度貴女も見ておくといいわ。吸血鬼の本気を。弾幕ごっこで収まればいいけど、そうならなかった場合……彼女を、紅魔館を敵に回すというのがどれほどのリスクなのかを知っておくべきよ。都市伝説異変の黒幕さん」
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