書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch

□四話『幻想少女逹の小休憩』
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BGM ボールのある日常

「終わっ……たぁ!」

出されていた課題、その最後の一つを終わらせてそのまま後ろへと倒れこむ。

一息ついてからPCを開くと生徒会を担当する先生から添付ファイルつきのメールが届いていた。
中を確認してみる以前の会議中に話した[夏季休暇中の特に注意しておいた方がいい催事]についての一覧が見やすくまとめられていた。最後に定型文のように[これらのイベントに参加するなら東深見の生徒としての自覚を持ちトラブルを起こさないように]と添えられている。
基本的には学校近辺での縁日、多少離れるが大きい駅周辺でのイベント、国際展示場での三日間等々。
確かにどれもこれも大なり小なりトラブルが起こりそうなものである。ターミナル駅ともなれば他校の生徒とのトラブルも想定できる。
恐らく各部活の顧問とかを通して全校生徒にこの連絡はいっているだろうから、これで生徒会が動くということにはならないだろう。
動くことになったら流石に生徒会の仕事の範疇を越えている気がする。

ざっとその一覧を眺めていると、ある一つに目が留まった。

少し早い気もするが確かにそんな時期だ。
直近だけどちょっとした息抜きと言う感じで見に行くのも悪くないだろう。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「花火大会?」

「そう、花火大会」

パッチェさんの帰り際、そういえばと数日後に待ち構えている夏ならではの催し事を伝えてみた……んだけどそこまでいい反応は貰えなかった。

「えっと……知らない?花火って」

「知識では知ってるけど見たことはないのよね。向こうはそういうきらびやかなのはほら、弾幕ごっこで溢れてるから」

「ああ、そういう……だったらなおのこと見に行ってくればいいじゃないですか。こっちに来てる特権みたいなものなんだし」

「……行ければね。開催日までに事が終わったとして、向こうに戻るまでどれくらいの間留まれるかなんてわからないし……」

もし、留まれるならそれもだけど海にも、行ってみたかったわ。と溜め息混じりに呟く魔法使い。

「そんな一瞬に戻るような物かな……って私の夢と同じなら一瞬だものね。あれだったら先輩に我が儘言って海と縁日につれてって貰えば……」

「そこまで我が儘言えないわよ。会場ってちょっと遠くなんでしょ?お金だってかかるんだし……大人しくあの家で過ごさせて貰うわ」

一寸だけ寂しいがこれが彼女なりの気の使い方なんだろう。

「じゃあもし幻想郷でお祭りとかあれば一緒に回りましょ、それくらいなら約束してもバチ当たらないわよね?」

「そういう事があったらね。向こうは毎日がお祭りみたいなものだし、何時でも呼びに来ていいわよ。皆にも話を通しておくし」

今度は入れ替わることないから顔パスで入れるはずよ、と玄関から外に足を伸ばしながら少女は言う。

私とはそう約束が出来るけど……とネガティブな考えが頭をよぎる。

「もしも……もしもの話なんだけど……ちゃんとした手順を踏んで、レイムッチ……霊夢と八雲紫さんに咎められることなく彼……千歳先輩を幻想郷に連れていけるとしたらさ……パッチェさんはどうしたい?」

全くの無意識、気が付いたらそんな事を聞いていた。

これには目の前に居るパッチェさんも目を丸くして、なにを言ってるんだコイツはって顔をしていた。

「あ、その……可能性の話ですよ?そんなこと出来るわけないって解りますし……。学生ってこういうタラレバの話が好きだからつい……」

「……そういう可能性を考えるっていうのはいいことなんじゃない?人間らしくて。でも、そうね……」

何を想像したのかはわからないけど、少しだけ笑ってから魔法使いは答えた。

「もしそんな奇跡みたいなことが起こればだけど……彼が来るなら、退屈しないでしょうし、お返しで幻想郷を案内したりで……うん。思いの外楽しいのかもね」

それじゃいきましょ、と話を切り上げ先を進む彼女の声は心なしか泣くのをこらえて震えているような気がした。


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