書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch
□幕間A
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BGM 亡き王女のためのセプテット(萃夢想)
そう言って偽物の近くまで飛んでいったレミリアさん。本気というのが肌でわかる、さっきとは空気が違うのだ。
「見つけた!菫子さん…貴女まで白黒みたいに侵入するように……ってお嬢様とパチュリー様?」
「すみません……ちょっと急いでいたので……」
私以外に弾幕ごっこの乱入者が来るとは思っていなかったのか、上空の二人が同じタイミングでこちらに声をかけてきた。
「咲夜、レミィを止め……」
「咲夜、その子を守りなさい。今からちょっと本気だすから周りを構っていられないの」
偽物を制するかのように吸血鬼は咲夜さんに告げる。目の前の従者は主人の言葉の意味するところを察したのか、すぐに私を庇うかのように弾幕ごっこ……いや、弾幕決闘中の二人と私の間に入ってきた。
「……なるほど、畏まりました。菫子さん、私から離れないようにお願いします。そうじゃないともしもの時に対処できないので」
「わ……わかりました」
声色が真剣だったから少し驚いてしまった私を見て、大丈夫ですよ。菫子さんは絶対に守りますから。と安心させるように優しく微笑みながら咲夜さんは言ってくれた。
「あら、あの子……いまの一瞬で私が違うことに気が付いたのね」
「当たり前でしょ。私の従者なんだから。……それじゃあ始めましょうか?」
「ええ、そうしましょう。早く貴女が惨めに負けるところを見てみたいの……だから一気に行くわよ?
錬金術の最奥、不老不死の霊薬
これが私の……記憶の力!
『メモリー・オブ・マジスタリー』」
あれって……パッチェさんとおなじスペルカード!?これってもしかして能力までコピーされてるようなものなんじゃ……。
「やっぱり、あれはパチュリー様じゃないのね」
「そうなんです……ってよくわかりましたね!?あんなに瓜二つなのに」
「まぁここで長く働いているもの、些細な違いぐらいはわかりますわ。それに、パチュリー様はあのような完成してない粗悪な魔術をスペルカードで使うことはありませんので」
完成してない……?
そう言われて弾幕決闘の方へと目をやると、偽物の後ろに顕れている結晶体は赤色の一つしかなかった。
パッチェさんの賢者の石は五つの結晶がそれぞれの属性を司るって聞いたのに……。
「オリジナルの記憶から再構築させて貰ったけど……わざわざリソースを五つに割くなんてまどろっこしい事しないで一つに纏めればいいじゃない。そうすればそこから放たれる弾幕の威力、速度、石の耐久性。どれも高くなるってーーー」
甲高い音を立てて結晶体が弾けとんだ。
一撃。たったそれだけで吸血鬼は偽物の隠し球であろうスペルカードを打ち砕いたようだ。
「耐久性がなんだって?」
「こっ……の!まだよ、このティンクトゥラは再生速度だってーーー」
いい終える前に弾けとんだ結晶、ティンクトゥラは再度集まり、大きな結晶体へと再生しーーー。
「ルーンが刻みし運命。操るは[揺れ動くもの]
吾、真祖の流儀にのっとり、汝を刺し貫かん!
神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
紅い光の奔流が再びティンクトゥラを粉砕する。
そして追撃の2投目が偽物に向け放たれていた。
「……ッ!間に合え、ティンクトゥラ!」
そう宣言するや結晶体が偽物を守るかのように復元し、破壊されながら槍の軌道をそらす。
紅い閃光は轟音を立て図書館の床を抉り、大きなクレーターを作り上げていた。
「記憶から再構築?嘗めた真似を……。あなたが妖怪としてどれだけの歳月を重ねてきたかは知らないけど、あの子が重ねてきた時間や努力の上澄みを掬って効率化だのなんだと宣うなんて反吐が出るわ。
……あなたが踏み躙った賢者の石は、親友の努力と研究の賜物なのよ?それを理解していないなら……あなたは賢者でも、哲学者でもない。そうあろうと思い込んでいる愚か者よ」
「まだよ……まだ負けてない!」
「……相手との力量も測れないだなんて……。なら、あなたの魔力が尽きるまでその汚い石を悉く破壊し続けてあげる」
再生するそばからそれを破壊していく吸血鬼。
今度は本体を狙わずに丁寧に再生しきるのを待ってから破壊していく。
まるで相手の心を折るかのように。
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