書架の魔女の現代入り 〜urban legend Witch

□最終話『未知との邂逅、変わる世界』
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BGM 暮色蒼然(原曲)

不思議な夢を見た。
うっすらと覚えている、この夢はあの夏の日に見た夢だろうか。

何処か田舎で少女達が宙を舞い、きらびやかななにかを打ち合う光景。
これが多分、『弾幕ごっこ』というやつだろう。あの日、彼女に話で聞いた通りだ。

その光景を眺めていると突然世界が暗転する。

そして暗くなった世界に声が響く。

『……あら、また貴方なの?久しぶりですわね。……成る程、縁が結ばれた上に契約まで……いいじゃない。そういうの、私は好きよ』

この声は……あの時も聞こえていた声と同じだろうか……わからないけど、何処か懐かしく感じる声色が耳に残っていた。

『ようこそ    へ』

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「はぁ!?外の世界の人間をよびたい!?……珍しく雁首揃えて来たかと思えば、そういうのを私が許すとでも思ってるのかしら……」

あのお茶会から数日後レミィと咲夜と共に博麗神社へと足を運び、巫女に無茶な話してみたのだが、分かりきった答えが返ってきた。

「ほとんどあり得ないことだけど、そう簡単に結界越えられたら負荷がかかって壊れるかもしれないとか考えないの?」

「それじゃあ、ここにたまに来る宇佐見菫子はどうなるの?彼女も外の世界から何度もこちらに来てるって聞いたけど」

「うぐ……あ、あれは特例よ特例。……話を聞くに、能力も何もない人間を喚ぶって聞いちゃ、巫女として止めないわけにはいかないってもんなの。言っとくけどこれに関しては弾幕ごっこで決める云々の問題じゃないから、無理矢理押し通すつもりなら……本気で行くわよ」

博麗の巫女に気圧されて臨戦態勢になる私と咲夜。親友はいつも通りの態度を崩さず、日傘を差しながら話し続けた。

「別にここを壊してまで……って話じゃないわよ。ここに来ればスキマ妖怪にも逢いやすいし、そのついでに貴女に話したの。それに私の親友が幸せになるのに居るべき世界がないんじゃ……しょうがないでしょ?」

「……それもそうね」

渋々と言った感じで矛を納める霊夢。
それを見て私達も肩から力が抜けた。

「これで私に結界の操作を頼もうものなら問答無用で退治してたところよ?前にちょっと緩んだだけで大説教になったし……。まあ、そんなことよりも、紫?いるんでしょ、出てきなさいよ」

何もないところに声を投げ掛ける。
すると空に一本の亀裂が入り……。

「そんなことじゃありません。結界を維持する貴女が自らそれを緩めるなんて言語道断よ?もしもまた同じことをしようものなら、私とそっちにいる仙人様にも手伝ってもらってきつく言いつけないと……」

そのスキマより姿を現す妖怪の賢者、八雲紫。

「あーはいはい。わかってますー。今はこっちの三人が話あるみたいよ?」

「わかってますわ。ごきげんよう、紅魔館の皆様方。用件については失礼ながら霊夢に話しているのを聞かせていただきました」

微笑んだままこちらに挨拶をする八雲紫。
いつから居たかはわからないが、既に話はわかっているようだ。

「それなら話が早いわ。八雲紫、貴女は外の世界の人間をこちらに喚ぶ事についてどう思うのかしら?」

「そうねぇ、無理矢理呼び出すというなら実力で排除させてもらうけど……そうではないんでしょ?」

「ええ、その辺りはさっき言ってなかったけど。ある意味では正規の手順を踏んだ召喚……になるのよね?」

率先して話を進めてくれていたレミィがここで私に話を降る。
ここからは私が全部説明した方がいいだろう。

「そうね。霊夢には言ってなかったけど、しっかりと使い魔としての仮契約を結んであるわ。あとは喚んで正式に契約を交わすだけ……」

「ちょっと待ちなさい。なんで外の人間と契約ができるのよ?」

「多分だけど……菫子が来てたときに一時期、里の人間が外の世界の夢を見たとか騒いでいたでしょ?その時にこの魔法使いも夢で外の世界との接点を持ったんじゃないかしら」

「……あぁ、あれね。って、そもそもあの事件は貴女が起こしたんじゃなかった?」

「あら、そうだったかしら?」

「あのねぇ……。いや、コイツに振り回されてちゃ話が全然進まないわ。でわざわざ私のところを訪れた理由はなんなのよ?まさか許可が欲しかったってだけとか?」

「……外の世界とはいえ人間を使い魔にするのよ?それに博麗の巫女として人間の妖怪化は見過ごせないんじゃ……」

「里の人間ならね。その、喚ぶ相手ってのは外の人間なんでしょ?そんな他所から来た奴をいきなりとっちめるなんて出来ないわよ。里に定住するならともかく……どうせアンタのとこで世話するんでしょ?そこに乗り込んでどうこうするのは筋が通らないわよ」

「……そうだったのね」

「ま、結界に影響がないなら私はなんでもいいわ。穴空けたり壊したりするわけでもないみたいだし。けど、喚んだあとはこっちに連れていきなさいよ?」

「……何をする気?」

「何って……歓迎会よ」

「そういうことにして霊夢が宴会をしたいだけでしょ?……まぁ、この世界に暮らす同胞が増えるのだから私も参加しますけどね」

「こう言ってるけど、レミィはどうするの?」

「貴女が納得するほうでいいんじゃない?あくまでその案件の中で私は裏方みたいなものだし喚んでから聞けばいいわよ」

「そういうものかしらねぇ」

「私達のスタンスとしては……ね。実際には当事者のパチェが決めることだろうから」

「ぅ……まあ、良く集まる場所だし。宴会するとしてもやっぱりここでした方がいいんじゃないかしら」

「ですって、じゃあその時は宜しくね。霊夢」

することは済んだと言わんばかりに咲夜とともに博麗神社をあとにする吸血鬼。
そのあとを追おうとした際に、八雲紫から意外な言葉を投げ掛けられた。


「そうそう、伝えそびれていたのですけど、貴女が契約した子に私も夢で何度か拝見させていただきました。……とても不思議な縁を持つ子ね」

「……あら、知ってたのね。夢と現の境界線でも弄ってたのかしら?」

「ええ、本当にそんな感じで。……紆余曲折があったとはいえ、貴女が外の世界に行っていたのは私たちの……いや、私の不手際によるものだからね。お詫びとして、喚び出しが失敗しないように一寸だけ手伝ってあげるわ」

「……なんかキナ臭いわね。別にお詫びが欲しい訳じゃないし遠慮しておくわ」

「あら残念。でも気持ちだけでもってことで……この御札を差し上げます」

「いや、だから――」

「これを使えば貴女との縁を辿って来てくれるはずよ。おまじない代わりで貰ってって」

何故か無理矢理に御札を手に握らせてくるスキマ妖怪。気圧されてそれを突き返すことも出来なかった私は、渋々その御札を持ち帰ることになった。


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