アイシー小話その1

□大和猛における愛情表現/被害状況
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ゴンと響いた鈍い音に、シャンプーを洗い流していた鷹は、大和が何かマズいことをしでかしたんだなとリンスをお預けにし水分を拭うと、バスローブを羽織って部屋に戻った。すると、そこでは二時間ドラマのようなシチュエーションが展開されていた。

異国の言葉で糾弾する『女』とそれを宥める男。崖っぷちのドラマである。

「人がせっかく用意してやったのに…どんなヘマやらかしたのさ」
壁際に追い詰められた大和に投げかけると、困った顔を返された。鷹は余裕があるなら容易く殺されはしないだろうと、電気スタンドで撲殺の構えを崩さない円子の方に声をかけ直す。
「いま大和を殺しちゃうと、試合で勝つ確率が下がるよ。マルコくん…マルコ。ゆっくり、手に持ってるソレ降ろして。そう…こっちにおいでよ…そう、おいで…いい子だね」
鷹に気付いた円子は突き刺すような目を和らげる。大和からすれば驚いたことに、素直に凶器を床に置くと母を見つけた迷子のように鷹の肩に縋った。

「…どうして鷹の言うことは聞くんだい」
大和が電気スタンドを元に戻せば、

「普段の行いだね」
親友からは皮肉が返された。
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