アイシー小話その1

□告白/証明
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ああ、僕も男なんだなぁ。

小早川セナはある日からしばらく、同じ夢を見、同じ感想で目覚めている。自ら、渾身で押し込みねじ伏せた感覚は後になればなるほど生々しく蘇ってきた。本当はどんな風にしたか、曖昧になるぐらい本能に脚色されていく思い出はイロばかりが鮮やかで、今日はついに夢精するまでたどり着いてしまった。

まぁ、相手も男なんだけどなぁ…

セナは早朝、濡れた下着を洗いながらも冷静だった。なんとなく、なんとなく予感はしていた。鈴音との関係が自分のブレーキのせいで進展しないこと、ライバル達への泥臭い挑戦心の奥、ちょうど腹の下から湧き上がる熱さ。
「僕ってホモなのかな…」
その呟きに、不思議と危機感はなかった。


「糞チビ。今はクリスマスボウルより大事なもんは作るなよ」
ヒル魔という男はエスパーではない。エスパー並みの勘の良さとスパイ並みの情報網を持っているだけだ。進との個人練習を切り上げたセナの背後から影を伸ばし、ヒル魔は淡々と忠告した。
「…大事にしたいとかじゃ、ない気がするんですよね」
「それもよしとけガキが。しばらくはアメフトやって体あっためてろ」
「ヒル魔さん、誰に対する親切心、ですか?」
「んなもんねぇよ。勝つため、それだけだ。『正義は一つ』…忘れんなよ糞チビ」
ヒル魔という男はエスパーでもスパイでもなかったが、類い希なる嘘つきだ。
「…ハイ」
セナは腹の中に忍び込んできた鬼を、そっと抱えた。
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