ほか、いろいろ。

□誠凛高校、バスケットボール部創設者不在期間の産物
1ページ/4ページ


勝負どころ、肝心な時、重要な場面であればあるほど、いつもいつまでもアイツは帰ってこず。
俺は自然とアイツの代わりをするようになり、カントクも俺をフォローするのに自然と荷物を背負い込んだ。
一ヶ月もしないうちにカントクの肩が荷に耐えられなくなって、これも自然のうちに、俺はカントクから少しずつ荷をわけてもらうようになった。

木吉鉄平の抜けた穴は俺とカントクを精神的に、肉体的に追い詰めた。
つかみ所を見せたがらなかった木吉の底は深くて、俺達がいくら頑張っても穴は半分も埋まらず、芯まで冷える雨が泥を溶かして穴に溜まっていく様にはいっそこのまま腐ってしまおうかと思ったほどだ。

俺も、カントクも。皆には言えなかった。言わなくたってバレバレだったろうけど、いつのまにかお互いの間で口に出すことも、暗黙の内にしなくなっていた。俺達だけじゃない。大黒柱がいなくてトリプルスコアのズタズタ、十五歳と十六歳だけで縋れる頼りもなく。

皆が必死だった。
全員、苦しかった。

痛みが新しい隣人となって一年。
新しい仲間が光と影を連れてきて、三ヶ月。

キセキの世代に叩きのめされ、課題だらけの俺達の前に木吉が帰ってくる。



【誠凛高校、バスケットボール部創設者不在期間の産物】



「センパイ、鉄平さんってどんな人なんですか?」

後輩ってのは大体が可愛い。何が可愛いって、俺よりも頭の位置が低いところが可愛いったらありゃしない。

俺は人に見下されるのが昔から大嫌いだった。百八十センチ以上が隣に並んで話しかけてこようものなら、心の中ではソイツの頭を鷲掴みにして肩まで押さえ込んでいたりする。
横からちらちらと、眼鏡の隙間を覗き見られるのが特に嫌いだ。
正面からならいい。まだ視線で見下せる。…ガキと言わないで欲しい。俺の眼差しはそのケのある奴には効果覿面だったりするのだから。

部内だと百七十八センチある俺より格段に高いのは木吉を抜けば火神と水戸部くらいで、水戸部には過去の経験から俺との間では立ち位置に気を使わせている始末だったりする。
…一度、他校との試合中、味方にも関わらず背の高さだけでイチャモンを浴びせた。結構なことを叫んだらしいが、俺の記憶に残っているのは青ざめる伊月と呆れるカントク、髪の毛の先まで凍った水戸部と華麗に決まったブザービーター。

勿論、俺の放ったシュートである。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ